実際に試聴してみると、彼らの思いが良く伝わってくる。低音は総ての音楽の基音となるので、この領域が抜け落ちているサウンドはそのほかの帯域をどんなに充実させても物足りなく感じるが、HA-SZ1000は実にどっしりとしていて揺るぎのないサウンドを奏でてくれるのである。どんな音楽をチョイスしても低音域のうねるような音まで味わえるが、全体の表現としては柔和なイメージ。作り手のセンスと言うか人柄が偲ばれる。もっともこの音作りについて、ぼくはもう少し抜けの良い感じがほしいと三浦に告げたら、彼はそんなこともあるだろうという感じで「ポータブル型の機器に繋いでもらった時にバランスが取れるよう設計したので、据え置き型のヘッドホンアンプと組み合わせると多少そうした傾向があるかもしれませんね」と答えた。
HA-SZ2000はHA-SZ1000同様、量感たっぷりのサウンドを聴かせてくれるが、さらに伸びやかさが増す。このドライバーユニットにはさらなる可能性が残されていることを窺わせる。ボーカル・ソフトの声の伸びやかさやニュアンスの描き出しも丁寧で、こうした部分に音楽ファンをくすぐる要素が隠し味として生きているようにも思った。
最初にこのヘッドホンを見た時、ぼくは「これは家飲み用だね」と三浦に話した。このサイズだと自分では外へ持っていかないだろうと思ったからだが、今回の新製品イベントにナビゲーターとして参加してみて、ヘッドホンのへヴィー・ユーザーにはそんな心配は無用であることを認識させられた。もっとも歩きながらの使用は個人的にはあまりお薦めできないが、新幹線の中とか機上なら心地よいひと時が訪れることだろう。彼らが「バンドポータブルヘッドホン」と名付けたことにも、なるほどなぁ、と思った。
世の中には低音域の再生を得意とするヘッドホンがほかにもある。しかしながらここまで質にこだわり、リアリスティックな表現力を備えた製品は皆無だ。だからこそぼくはリクエストしておきたい。ホーム用としての使い勝手を広げるため次期モデルではケーブルは着脱式にしてほしいと……。延長ケーブルを使えばすむことだが、せっかくの性能を犠牲にしたくない。ロング・ケーブルが装着出来れば、ゴロゴロしながらもっといい音が楽しめる。あんまり気の利いたお願いではないが、そうした使い方もしたくなる製品ということである。
2つのドライバーユニットのサウンドが一体化して新たなる音世界を創造する「LIVE BEAT SYSTEM」(ライブビートシステム)は、このモデルで第二世代に入った。技術的なバックボーンと感性の融合が新たなる音を生み出す。ハードウェアを仕上げていく過程はもちろん、音が出るまでのプロセスが楽しいという三浦たちの意欲が、これからもきっとオーディオと音楽再生の楽しさを橋渡ししてくれることだろう。ますますもってこの先の進化が楽しみなヘッドホンである(文中敬称略)。
型番 | HA-SZ1000 | HA-SZ2000 |
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型式 | ダイナミック型 | |
再生周波数帯域 | 5〜3万3000Hz | 4〜3万5000Hz |
感度 | 107dB/mW | 108dB/mW |
インピーダンス | 16オーム | |
最大許容入力 | 1500mW | |
コード | 1.2メートルOFC線 | 1.2メートル銀コートOFC線 |
プラグ | 3.5ミリステレオミニ(金メッキ) | |
重量 | 450グラム | 480グラム |
付属品 | キャリングポーチ | |
実売想定価格 | 2万5000円前後 | 3万5000円前後 |
発売日 | 5月下旬 | |
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia LifeStyle 編集部/掲載内容有効期限:2013年6月13日