今回はQS-9の実力をスピーカー再生でも確認してみた。また、ピュアで温かみのあるサウンドがアナログレコード再生とどんな風にマッチするのか興味があったので、スピーカーには「S-300NEO」、ターンテーブルには「TN-350」をそれぞれティアックからリファレンスとしてお借りした。
はじめにPCオーディオ環境でスピーカーを鳴らしてみる。USBケーブルでPCとQS-9をつなぐまでのところはヘッドフォン再生と一緒。左右のスピーカーはQS-9背面のスピーカーケーブル端子につなぐだけ。あっけないほど簡単にセットアップできる。
PCはMacBookに戻して、USBリスニングをスタートした。澄み切ったサウンドが部屋いっぱいにひろがる。ミロシュのクラシックギターは音色にクセがなく、あふれるほどの生命力を感じる。強弱のコントラストが鮮明に描かれ、生々しい演奏が自宅のリスニングルームに蘇ってくる。明るく精気を与えてくれるような、張りのあるスピーカー、S-300NEOのキャラクターが生きている。
オーケストラも、カラヤン指揮によるベルリンフィルの「新世界から」の「第4楽章」のダイナミックな情景を描きだした。打楽器とコントラバスの低域がどっしりと響き、迫力いっぱいだ。弦楽器の高音域がシャープに伸びて、高さや奥行き方向にワイドな空間を広げる。楽器の定位が鮮明で、特にピアニッシモの音色がハッキリと粒立つ。帯域同士のつながりが滑らかで、ドンと束で押し出してくるようなS-300NEOの力強いサウンドを全身に浴びる。
最後にアナログレコードのサウンドも味わってみる。ティアックのTN-350をQS-9のライン入力につなぐだけ。フォノイコライザーはプレーヤー側に搭載されているので、これもまたセットアップは非常に簡単だ。
鮎川麻耶が歌う『風のノーリプライ』では、デジタル音源の再生時よりも空気の密度感がしっとりしてくる。声は艶やかで、高域の余韻もふわっと柔らかく広がる。丸みを帯びた弾力あふれるエレキベースの躍動に自然と体が動いてしまう。楽器1つ1つの音が立体的で、演奏空間は奥行きの描き込みが鮮やか。無闇な脚色を避けたQS-9のニュートラルなバランスと相まって、スピーカーが水を得た魚のようにイキイキと気持ち良く鳴っている。最良の組み合わせの1つを見つけられた喜びを噛みしめた。
コンパクトながらさまざまな機器と組み合わせて応用的な使い方ができるUSB-DAC内蔵の真空管プリメインアンプには、本機にしか出せない持ち味がある。それでいて、価格が3万円台というから驚きだ。圧倒的に高いコストパフォーマンスといえる。手頃な真空管プリメインアンプを探している方はもちろんのこと、普段はアウトドアでヘッドフォンを中心に音楽を聴いている方も、自宅でのヘッドフォン再生環境がリッチにできるだけじゃない。将来はスピーカーによるリスニング環境を整えて、いま流行のアナログ再生にもチャレンジしてみたいという、欲張りな期待を受け止めてくれるコンパクトなオールラウンダーに要注目だ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia LifeStyle 編集部/掲載内容有効期限:2016年11月7日