“オシアナスブルー”誕生秘話――青き革命児のクロニクル(2/3 ページ)

» 2017年12月01日 10時00分 公開
[山本敦PR/ITmedia]
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“濃く深い青”を作り出した着色の技術革新

 続く2012年からはブルーをめぐる技術革新が本格化していく。10月に発売された“Manta”シリーズ「OCW-S2400」から初めて、ブルーのパーツの着色に真空蒸着による技法の1つであるスパッタリングが採用されたのだ。これが“オシアナスブルー”の革命をもたらすことになった。白石氏がスパッタリングを採用した経緯を説明する。

“Manta”シリーズ「OCW-S2400」

 「スパッタリングによる着色は、濃く深い色合いと輝度感を出せることが特徴です。ところが反対に、狙った色がなかなか出せない難しさが付きまといました。実際のパーツに着色すると、眺める角度で色合いが変わってしまうため、納得のいく色に調整するまで長い時間をかけました。安定的に色を再現するため部品ごとに何層もスパッタリングをしながら組み立て、製品全体でブルーの統一感を出すことに約2年ものあいだ腐心してきました」(白石氏)

OCW-S2400(写真=左)とOCW-S2000(写真=右)。S2400では初めてスパッタリングによる着色が採用された
OCW-S2400のスパッタリング着色による色合いは何度もトライアンドエラーを繰り返しながら決定した

 実物を撮影した写真を見ると、本機のブルーがきれいに揃っていることが分かるだろう。残念ながら、現物を目で見たときに筆者も魅了された鮮やかさが写真で再現しきれていないようだが、ご容赦いただきたい。

 次に“オシアナスブルー”が大きなステップアップの時を迎えたのは2015年のことだった。当時発売された「OCW-G1100」ではベゼルまでもが美しく輝くブルーになり、多くのファンを魅了した。

「OCW-G1100」

 写真を見ればすぐに分かるように、通常はバンドやフレームと同じ色のシルバーであることが多い文字盤外側のベゼルに、ブルーを蒸着したサファイアガラスをはめ込んでいる。白石氏は「海のように透明で鮮やかな青色に加えて、宇宙の闇に浮かびながら輝く地球のように、濃く深いブルーの色合いを再現すること」が開発時のテーマだったと語っている。その過程ではサファイアガラスの調色だけでなく、文字盤内部のブルーの金属パーツが持つ質感も引き立てつつ、全体のトーンにプレミアムな香り漂う統一感を持たせることにも大いに気を配ってきたという。

 同年にはもう1つの注目機が発売されている。世界で限定2000本だけが販売された「OCW-G1000E」だ。2014年に発売された当時世界初のフルメタルGPSハイブリッド電波ソーラー時計「OCW-G1000」が本機のベース。金属ベゼルの着色には乾式メッキの技法の1つであるイオンプレーティング(IP)を採用しているが、従来よりも鮮やかな新色を開発したことで、外気や湿気にさらされ、人が手で触れるベゼルにも色あせることのないブルーを配色できた。

「OCW-G1000E」

 「文字盤の内部に比べて、オーナーが手で触れるパーツの塗装については変色や剥離の検査、水分だけでなく薬品に対する耐性も厳しくチェックします。その上で鮮やかな青色を再現するために2年を超える開発期間を費やしてきました」。白石氏が苦難の道のりを振り返る。

OCW-G1000(左)とOCW-G1000E(右)を並べた
オーナーが頻繁に手で触れるベゼルにも新色のイオンプレーティング(IP)着色を採用したことで色あせることのない鮮やかなブルーを実現した

 IP着色のトライ&エラーを繰り返した時のテストパターンも見せていただいたが、最終製品と見比べてみると、非常に濃厚なブルーに仕上がっていることが分かる。本機は限定モデルなので、竜頭とセンターの秒針に多面カットした再結晶ブルーサファイアをはめ込んでいる。ベゼルと化粧パーツの色合いも丁寧に調整されているというから驚きだ。

「OCW-G1100」開発時の試作サンプル。ベゼルの蒸着色はいくつもの試作を繰り返して色を調整してきた

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提供:カシオ計算機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia LifeStyle 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月31日

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