もみ消したいことがあれば、この男に頼め――「フィクサー」:本山由樹子の新作劇場
出世コースから外れた弁護士が、トラブル処理専門のもみ消し屋に。ジョージ・クルーニー主演、アカデミー賞にノミネートされた骨太な社会派サスペンス。
フィクサー
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「ジェイソン・ボーン」シリーズの脚本を手掛け、大成功を収めたトニー・ギルロイが監督デビューを果たした「フィクサー」が、9月26日にDVDで登場。特典は未公開映像集とオーディオ・コメンタリーを収録予定。
ジョージ・クルーニーが製作総指揮と主演を兼任した本作は、作品賞・監督賞・主演男優賞などアカデミー賞主要7部門にノミネート(ティルダ・スウィントンが助演女優賞を受賞)されたが、それも納得の骨太な社会派サスペンスに仕上がっている。
ニューヨークの大手法律事務所で出世コースから外れ、さまざまなトラブルを秘密裏に処理するもみ消し屋=フィクサーとして席を置くマイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)。彼は上司からの信頼も厚いが、この職務に嫌気がさしている。そんな中、マイケルに新たなミッションが下る。会議中に突然、衣服を脱ぎ出すという奇行に走った同僚弁護士のアーサー(トム・ウィルキンソン)を何とかしろというのだ。
一度はアーサーの身柄を引き取るマイケルだが、アーサーはすぐに失踪してしまう。実は、彼はクライアントである大手農薬会社の汚い実態を知り、良心の呵責(かしゃく)にさいなまされ、その不正を暴こうとしたのだ。やがてアーサーが死体で発見される。鍵を握るのは、農薬会社の企業内弁護士カレン(ティルダ・スウィントン)。事件のすべてを知り、人生の岐路に立たされたマイケルもまた消されかけるが……。
自ら脚本も手掛けたギルロイが、法曹界と企業の癒着という、アメリカ社会の“闇”に肉薄。緊迫感みなぎるストーリー展開で、見る者をグイグイと引き込んでいく。
妻とは親権争いで調停中、しかも従弟と始めたレストランが失敗し多額の借金を抱えたマイケルは公私ともに行き詰まり、孤立無援の中で、ある決断を迫られる。マイケルの姿を通して、正義とは何か?良心とは何か?を考えさせられる。
「バットマン・ビギンズ」「エミリー・ローズ」のトム・ウィルキンソン、「コンスタンティン」「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」のティルダ・スウィントンといった実力派俳優が演じるキャラクターたちも、それぞれに矛盾を抱え、ストレスを抱えて生きている。そのジリジリ感が画面から痛いほど伝わってくるのだから、役者たちの熱演はもちろん、ギルロイの初監督とは思えない演出手腕も買いたい。
ラストに映し出されるクルーニーの、何か吹っ切れたような表情が印象的。全体的に重いが、爽快感も残る力作だ。
関連サイト:http://www.fixer-movie.com/(公式サイト)
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