メーカーはやっと“だれでも高画質を楽しめる”テレビを目指し始めた(3):本田雅一のTV Style
今回は、東芝「REGZA」のおまかせドンピシャ高画質とソニー「BRAVIA」のシーンセレクト機能を紹介しよう。方法論は違ってもテレビのパフォーマンスを100%発揮させようというコンセプトは同じだ。
先週は、日立製作所が最新のWooシリーズに搭載した自動画質調整機能「インテリジェント・オート高画質」について話したが、現在はこの機能で唯一のライバルになってしまった東芝も、おそらく「おまかせドンピシャ高画質」を、年末までにさらに改良してくるだろう。いや、実はこの機能を搭載して以来、東芝は常におまかせドンピシャ高画質の機能に改良を加え続けていた。
日立のアプローチは通常のテレビ番組と映画の2つに映像を分類し、それぞれが画質設計の意図通りに見えるよう、色温度やバックライトの明るさを調整するというものだった。人間が映像を目視しながら調整を加えるのに近い雰囲気となる。
東芝の自動画質調整機能は、春に登場した8000シリーズで「おまかせドンピシャ高画質・プロ」に進化。人間の視覚反応の1つである「明暗順応」に合わせ、周囲の明るさが変化した際に画質を切り替える時間を微妙に調整する機能が加えられた
これに対して東芝の手法はもっとアクティブで、映像の中身に応じて常に動的に調整が働き続けている。また周囲の明るさに対して、画面をどの程度の明るさにしようか? といったパラメータも、ユーザー自身が選べるなどマニアックな構成だ。
ただし、どちらも今後、さらに改良を施す余地は残っている。それはユーザーの好みに応じた画質へと自動調整する機能への発展である。特に難しい調整を行うというのではなく、もう少し色がのっている方が好きとか、明るめの画面が好きだとか、好みの部分に踏み込んだ調整だ。もっとシャープに、あるいは柔らかくといった従来的な画質パラメータではなく、使用者の感性に合わせて自動的に画質の目標を変えるというものだ。
実は、そうした「お好み通りに調整しましょう」的な機能は、自動画質調整機能が実際の製品になる以前から、各テレビメーカーと何度もディスカッションしてきた。画質調整のパラメータが、あまりに一般ユーザーには難しすぎるからだ。とくにデジタルの場合、アナログとは違ってパラメータを不用意に動かすと、元の映像が持っている情報が失われてしまうことがある。
自動調整機能が成熟してくれば、その先にユーザーのお好みに合わせた画質へと自動調整するという方向に進むことができるだろう。
さて、この2社以外に同様の機能を開発しているところはないのだろうか? と考えている読者も少なくないと思う。実は他社も同様の機能にここ数年、取り組んでいたようだ。ただし、完全に各機能に納得できない、あるいは完成度が低いなど、さまざまな理由で、搭載は見送られてきた。自動画質調整機能を重視して購入するユーザーがあまり多くなかったため、スグに搭載する必要性も感じていなかったのかもしれない。しかし、少しずつ状況は変化してきている。
ソニーは「BRAVIA」に「シーンセレクト」という機能を搭載した。これは番組のジャンルごとに作り込んだ画質モードを選ぶというもので、”オート”を選ぶと番組情報やHDMIに接続した機器の種類から判別して、自動的に画質モードと音質モードを自動で変えてくれるというもの。自動“画質調整”ではなく、自動“画質モード選択”機能(ちょっとヤヤコシイが、この2つは明確に異なる)である。
これに明るさセンサーによるバックライトの自動調整などが入ることで、よりシンプルな視聴スタイルを実現しようというわけだ。連続的に画質を変化させないため、各画質モードを詳細に作り込めるのが利点だろう。画質モードの種類は限られているから、各モードごとに徹底的な作り込みを行える。ただ、中途半端な場面ではうまく合わないケースもある。
とはいえ、ユーザーが自ら使いこなさなくとも、購入したテレビのパフォーマンスを100%発揮させようというコンセプトは同じ。将来は連続的な自動画質調整へと発展するのではないだろうか。もちろん、他メーカーも黙ってみているとは思えない。
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