3Dテレビの進化と分化――「2011 International CES」総括(2):麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/3 ページ)
「2011 International CES」総括の後編は、海外メーカーを含む3Dテレビの動向に注目した。CESの会場で麻倉怜士氏が見つけたテレビを巡る3つの動きとは? そして同氏がもっとも感動した3D表示とは……?
新しいテレビ、4K×2Kの潮流
――3Dメガネといえば、互換メガネを作ろうとする動きもあるようですね
麻倉氏: 3Dメガネの標準化も1つの流れになっています。例えばXpanD方式の互換メガネは、テレビメーカー各社の3Dテレビにあわせた設定を最初から入れてあり、ボタン操作で切り替えることができます。また第2世代になると、iPod/iPhoneのアプリを使って設定が行えるようになります。
また、それとは別に業界標準のメガネ仕様も策定中で、3月ころまでにまとまる見通しになっています。こうした互換メガネは、XpanD方式の映画館に持っていっても使えますよ。
Real Dはファッション性の高い偏光メガネを作ろうとしています。ファッションブランドのフェンディなどとコラボレーションして、“ブランド偏光メガネ”を出すようですね。こちらもReal D方式の映画館で使えますし、LGエレクトロニクスのCinema 3DやサムスンのRDZ方式のテレビでも利用できるはずです。
4K2K、超解像の新しい流れ
――ポイントとして挙げた3つめ。「新しいテレビ」の動きとは何でしょう。
麻倉氏: 大きなトピックとして、フルハイビジョンを超える4K×2K解像度のテレビがいよいよ登場しますね。振り返ってみると、2008年にソニーが82V型の液晶パネルを使った4K2Kテレビを提案し、2009年には東芝も64V型を展示しました。しかし2010年には3Dの波がやってきて、4K×2Kテレビはそのまま持ち越されてしまったという状況です。
そして2011年。東芝が開発表明を行った「グラスレス3Dレグザ」の大型タイプ(50V型以上)は、既存モデルと同じインテグラルイメージング方式とレンチキュラーシートで裸眼立体視を可能にしていますが、今回は2Dと3Dのコンパチブルで、2Dなら4K×2K表示が可能になります。いよいよ4K×2Kのテレビも登場することになりましたね。私としては、最初から2Dだけのモデルも用意してほしいところですが。
一方、CESでお披露目を行ったビクターの4K2Kビデオカメラも良好な画質でした。こちらも切替式で、フルHDの3D、あるいは4K2Kの2Dが撮影できるコンパチブル機になります。
さて、テレビの解像度がさらに上がってくると、対応するコンテンツのない現状ではアップコンバートの性能が求められます。東芝が超解像処理を含む「CEVO ENGINE」(シーボエンジン)を開発するなど、各社とも頑張って研究開発を進めていますが、CESの会場で私が注目したのは米国のテクノロジーベンチャー、DARBEE(ダービー)のブースで見せていた2D-3D変換を応用した超解像技術でした。
創業者はいわゆる3Dマニアです。昔、アナグリフで作った3D映像で遊んでいたとき,左右の視差がついた映像を1つに合わせた信号と、同じ場面を撮った2D信号を合体させると元の映像よりもはるかにきれいな映像になることを発見したそうです。DARBEEは、その処理を応用したホームシアター用途の外付けプロセッサーを米国で販売しているのですが、実際に処理した映像を見ると、奥行きとディテールの再現性に優れ,テクスチャー再現も良好。しかもノイズがほとんどありません。画像がぼけない、魔法のような超解像でした。それを4K×2Kへのアップコンバーターとして活用する道もあるでしょう。
――最後に、今回のCES取材を総括してください
さまざまな話題がありましたが、基本的にはテレビが新しい時代に向けて変革を続けているということが分かりました。新しいサービスや画質、立体感を獲得して、ホームエンターテインメントのハブとして、より強化されていきます。やはりテレビは家電の王様であり、リビングルームの中心であり続けます。それが、「2011 International CES」を通じて強く感じたことですね。
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