「スマートテレビ」の論点をもう一度整理してみよう(3):本田雅一のTV Style
わたしがスマートテレビの条件として提示したのは、新しいネットワークサービスへ柔軟に対応できること。そして動画のネット配信は、新しいフォーマットへの対応性も高い。
「スマートテレビ研究室」のシンポジウム(→動画アーカイブはこちら)で、わたしがスマートテレビの条件として提示したのは、新しいサービスへ柔軟に対応できることだ。例えばソニーはクロスメディアバーにアプレットを追加することで、新しい動画配信サービスに対応できるようにした(→前回の記事)。
こうした流れが確定してくれば、現在のように映像配信サービスの枠組みをテレビ側が決め、そこにコンテンツを集める“アクトビラ型”のビジネスではなく、人気のある映像配信サービスが生まれたら、そこにテレビ側が対応していく(あるいは配信サービス側が視聴者を獲得するためにテレビ用にアクセス用アプレットを開発して提供する)といった流れを作れるかもしれない。
もう1つの理由は、インターネットによる動画配信は新しいフォーマットへの対応性が高いことだ。例えば今年は4K×2Kパネルを用いた高解像度テレビが発売されるといわれている。放送する画素よりも多い画素のパネルに対し、複数フレーム超解像などにより画質を追求するシナリオだが、将来はともかく、すぐに4K2Kの放送が行われる可能性はない。
3Dに関しても同じだ。新たな映像フォーマットが初期段階でコンテンツ不足になるのは当然のこと。テレビ局に対する働きかけや映画などのBlu-ray Disc化も重要だろうが、インターネットを通じた配信が、今後はより積極的に使われると思う。
ソニーが“BRAVIA”向けに開始した3Dデモ映像の配信サービス「3D Experience」は、そうした意味でも興味深いものだ。現時点は自社製品のプロモーションと3D映像の体験を目的としているが、同様の取り組みは今後増えていくだろう。
余談だが、この3Dデモ映像の中には、女子ワールドカップ決勝戦における澤穂希選手の同点ゴールが、ゴール裏からのアングルで3Dで収められていた。これはテレビ放送用カメラにはなかったアングルだ。またアヴリル・ラヴィーンの3Dデモクリップも、DVDでは発売されているが3D版は入手不能なものだとか。ブロードバンドインターネットにBRAVIAが接続されている店頭、あるいは知人宅、自宅などで、チャンスがあるならば是非楽しんでみみてほしい。
なお、現在は今年発売の3D BRAVIAのみで楽しめるこの特典だが、昨年モデル向けのアクセス用アプレットも鋭意開発中で9月にも見れるようになるそうだ。
話が横道にそれたが、3Dでも4K×2Kでも、新たな映像フォーマットの体験を広めようとする際、これからはインターネットを通じたコンテンツの流通が、より積極的に使われるようになるのは間違いない。
例えば4K×2Kテレビに対して、動画ではなく静止画で高精細な写真集を配信するといったこともインターネット配信を用いれば考えていくことができる。これまでメディアのフォーマット規格は、コンテンツの流通に必要不可欠な要素だったが、インターネットでのコンテンツ流通が増えてくれば、フォーマットに縛られない斬新な提案も増えてくることだろう。
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