“全録時代”におけるテレビとネットワークの楽しみ方:本田雅一のTV Style
日本における映像制作の主流はまだまだテレビ。テレビ局がインターネットに対して、ゆっくりとしか歩みを進めることができないのであれば、”自分でテレビ放送をネットワーク化”する手もある。
前回は、”ネットワークを活用した映像コンテンツの流通を考えるなら、各国特有の自浄に合わせる必要がある”と書いた。今回は、日本が持っているテレビ放送という大きなコンテンツを生かす方法を考えていきたい。
昨今の海外ドラマがよく見られているという背景を考えれば、映像コンテンツにもグローバリズムの波が押し寄せてきているともいえるが、言語や文化の違いは意外に大きいものだ。また、”どのような経路でコンテンツが流れるか”も、各国の放送免許やインターネット放送の枠組み、それに映像制作の業界構造とも密接にかかわってくる。
昨今は「Ustream」や「ニコニコ生放送」などで、インターネットを通じたコンテンツが生まれている。とはいっても、日本における映像制作の主流はまだまだテレビだ。現状のように、テレビ局がインターネットに対して、ゆっくりとしか歩みを進めることができないのであれば、”自分でテレビ放送をネットワーク化”すればいい。もちろん、録画番組をインターネットで公開するという意味ではない。レコーダーやテレビが持つDLNAや番組持ち出しの機能を活用するだけでいい。
今後、重要になるであろう要素として“全録”がある。とにかく録り貯めた番組をネットワークで活用する――例えばPTPの「Spider」などが提案する考え方だが、東芝も「CELL REGZA」に続き、“REGZA”「ZG2シリーズ」を投入して価格レンジを引き下げた。記録媒体の大容量化、タブレットやスマートフォンなどネットワーク対応機器の増加、デジタル家電のネットワーク対応の進行などを考えると、この流れはさらに進んでいくだろう。
必要と思われる番組をすべて録画しておき、その中から残しておきたいものだけをHDDの別領域や光ディスク、あるはUSBの外付けHDDなどに移しておく。例えば、それを外出先のスマートフォンやタブレットで再生できるようになれば、もう「テレビ番組表」の編成がどうなっているかなど、気にする必要はない。
会社や学校で、友人・知人に「あれが面白かった」と言われたら、録画番組の中から”取り置き”しておけばいい。すべて録画しているのであれば、レコーダーの中には必ず目的の番組が残っている。
番組編成の権利が手元に転がり込んでくるだけでない。最新のレコーダーの中には、放送をネットワーク経由で別のデジタル機器へと中継できる機器もある。宅内での利用に限られるが、タブレットやPCなど、そのときに都合の良い機器――それがチューナーを内蔵していない機器であっても――放送をリアルタイムに楽しめる。
実際に製品がいくつか登場し、その快適さが知られるようになると、新しいアイディアもたくさん寄せられるようになるだろう。これから数年といったレンジで考えると、日本のテレビは全録機能を持つレコーダーなどの機器との連動や、タブレット、スマートフォンの連携を軸に進化するのではないだろうか。
少し気になるのは、視聴率という概念だ。何が人気の番組で、どんなコンテンツが今、見られているのか。広告ビジネスだけでなく、世の中の流行を見る上でも、番組視聴率は大きな意味を持ってきたが、全録時代には新しい価値評価が求められるはずだ。いずれ、この連載でもそうした話をしていくことにしたい。
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