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時代が新しいデバイスを要求している――CES総括(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/3 ページ)

スマートテレビを中心に取り上げた前編に続き、後編ではテレビメーカー各社の新戦略に見る“高級志向”という流れ、そして注目の新パネルについて、AV評論家・麻倉怜士氏に聞いていこう。

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麻倉氏:ソニーの展示機が、もっとも高画質でした。ソニーが不幸だったのは、日本の大手マスコミが、「Crystal LED Display」を“LEDバックライトの液晶テレビの新型”と勘違いして、あまり取り上げなかったことでしょう。サムスンがLEDバックライトの液晶テレビを“LEDテレビ”と称して売っているためかもしれませんが、やはり勉強不足ですね。

ソニーの「Crystal LED Display」

 さて、クリスタルLEDが素晴らしいのは、ブラウン管やプラズマテレビと同じ自発光で、コントラストと色の再現範囲が広いことです。LEDは自然さを持ちながら再現範囲が広いという特性があります。視野角も有機ELより広いのではないでしょうか。


東芝ブースに参考展示されたタブレット

 また、有機ELのように、サイズが20型を超えると全く別の作り方をしなければならないわけではありませんので、いったん製造方法を確立すれば量産の道が開けるはずです。将来性と画質の両面で、クリスタルLEDは高く評価したいと思います。

 今回のCESでは、東芝も有機ELパネルを搭載したタブレット端末を展示し、パナソニックも有機ELテレビを出す方針を打ち出しました。パネルについては外部調達の可能性もありますが、いずれにしても自発光パネルに注目が集まっているのは事実でしょう。もともと自発光式は、画質、機能、視野角、応答速度といった性能でも優れています。今後はバックライト発光が必要な液晶テレビから、CRTと同じ自発光方式に移っていくのではないでしょうか。時代が新しいデバイスを要求している、という印象を受けました。

――最後に総括をお願いします

麻倉氏:前編で取り上げた“スマートテレビ”というネット対応テレビは、確実に市民権を得ています。スマートテレビをプラットフォームとして、コンテンツ、端末といったエコシステムが形成されつつあります。これまでは放送波を受信するチューナーを備えたディスプレイのことを「テレビ」と定義していましたが、その前段が多様化し、従来の枠に収まらないものになりつつあります。コンピューターのパワーで再生表示能力を向上させるテレビさえ出てくるのです。

 一方、コンテンツサービスを受けることのできないテレビは、単なるモニターです。ですが、私はむしろ、そういう方向性もあるのではないかと考えています。BDプレーヤーやレコーダーをセットトップボックスにする手法もありますし、ユーザーは見たいものを視聴できれば良いのですから、すべてをネット対応にする必要もないでしょう。

 メーカーが考えるべきなのは、ハイエンドとローエンドの切り分けです。これまで国内メーカーは、サムスンなどの低価格路線に対抗しようと安い製品を作ってきました。しかし、シャープの「ELITE」やソニーの「XBRシリーズ」のような高級機でブランドイメージを上げる必要もあります。もちろん、市場シェアや流通網の充実も重要ですから、かつてのパイオニアのようにハイエンドだけに注力してもいけません。ハイエンドモデルを売るためにローエンドもやる、ローエンドのためにハイエンドをやる。どちらもきっちりとやらなければならないと思います。

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