テレビはもう、次のフェーズへ IFA総括:麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/4 ページ)
AV評論家・麻倉怜士氏によると、「IFA 2012」は、テレビの“次のトレンド”がはっきり見えたイベントだったという。韓国勢の有機ELテレビからソニー、東芝、シャープの4Kテレビまで総チェック。
――パナソニックはいかがでしたか?
麻倉氏:パナソニックは、現行商品のデモンストレーションがメインで地味だった印象です。来年のCESは津賀社長がキーノートですから、派手なものはその時にとってあるのでしょう。ただ、技術展示は面白かったですね。今年のIFAでは103インチの裸眼3Dも展示しました。
もともとパナソニックの3Dに対する基本姿勢は「画質第一」でした。Blu-ray 3Dの規格制定時には、サムスンの偏光方式やフィリップスの裸眼方式を退けたくらいです。しかし。今年春の新製品では32V型液晶テレビでLGの偏光方式を採用し、製品の幅を広げてきました。
裸眼立体視のデモンストレーションでは、視聴場所は限定されるものの、かなり自然でテクスチャーも良好な3D映像を見ることができました。例えばローバー・ミニを3Dで撮影した映像がありましたが、光の反射がよく出ていて、質感は上々でしたね。
――ほかに目立つ展示はありましたか?
麻倉氏:シネスコと同じアスペクト比21:9のテレビは、LGが29型で出していました。また、ドイツのレーベというメーカーは、ユーザーが柔軟にカスタマイズできるテレビを展示して面白かったです。これは、“インディビジュアル”というブランドの製品ですが、スピーカーのサランネットの色から、スタンドなどを好みで選択できます。色と素材の組み合わせが100種類以上あるそうです。欧州にはデザイン指向のユーザーが多いことを示していますね。それから、ソニーのヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T2」は現地でも人気でした。
――最後に今年のIFAを総括してください。
麻倉氏:現状、テレビ事業が世界的に苦しいのは周知の通りです。日本ではアナログ停波による需要の先食いと円高による売上げの減少。世界的には中韓メーカーによる過剰な価格低下による収益の低下といった問題が表面化しています。しかし、家庭のエンターテインメントとしてテレビに代わるものはありません。パーソナルなエンターテインメントならばタブレットやスマートフォンもありますが、家族で楽しむという点において、テレビの座を奪うものは存在しません。テレビの可能性を広げ、新しいエンターテインメントを作る必要があります。なるべく早く、新しい段階に移るべきだと思います。
そもそもIFAの位置付けは、商品化を前提としたトレンド作りです。それは年初の「International CES」と比べると分かります。CESは別名、“とりあえず出品してみまショー”。商業的な裏付けはなくても、とにかく新しい技術を披露して、それから方向性を探るというテストマーケティング的な色合いが濃いのですが、IFAはCESから9カ月が経過してトレンド検証が終わり、かつクリスマス商戦の3カ月前ですから、商品化を前提とした出品が多い。つまり、確実なトレンドに絞られるのがIFAです。これからの世の中を変えていく可能性が高い、新しいテレビの方向性が打ち出されたことは意義が大きいと思います。
関連記事
- ソニーが84V型「4K LCD TV」を発表、「あらゆる映像ソースを最高の品質で」と平井社長
「テレビのクオリティーにおいて大きなブレークスルー」。ソニーソニー社長兼CEOの平井一夫氏が「IFA 2012」のプレスカンファレンスで大きく胸を張った。 - 高精細だから見えるもの、東芝が開発を進める「レグザエンジンCEVO 4K」
2013年に84V型の4Kテレビを投入することを明らかにした東芝。その画質のカギとなるのが、「レグザエンジンCEVO 4K」という新しい画像エンジンだ。同社の取り組みについて、IFAに合わせて開催されたプレス説明会の内容と合わせて紹介していこう。 - IFAに見る大画面テレビのトレンド(1) 〜大型有機ELテレビは年内に登場するか?
年末に向けたショーケースとして重要な位置を占めるようになった「IFA 2012」。国内メーカーが披露した4Kテレビとともに注目を集めたのが、サムスンやLG電子の有機ELテレビだった。 - 製品化が近づくシャープ「ICC LED TV」、他社の4K戦略との違い
「4K」ではなく、あくまで「ICCを搭載したTV」というシャープ。80インチを超える4Kテレビを各社が展示する中、少し違う戦略を持っているようだ。 - 4KはBDの感動を4倍以上にする? CEATEC総括
5日間でのべ17万2137人が来場し、盛況のうちに幕を下ろした「CEATEC JAPAN 2011」。国内でも4Kのスタートを印象付けるイベントとなったが、AV評論家の麻倉怜士氏はどのように受け取ったのか。詳しく話を聞いていこう。 - 2Dで実現する立体映像、シャープが「ICC」を採用する理由
先週ドイツ・ベルリンで開催された「IFA 2011」では、国内メーカーが進めている次世代の技術開発を垣間見ることができた。中でも印象的だったのが、シャープが展示していた“ICC+4K×2K”の技術デモンストレーションである。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.