AVアンプでハイレゾ再生、ソニー「TA-DA5800ES」のすごいコダワリを聞く:ES型番のハンダあります(3/3 ページ)
ソニーのAVアンプ「TA-DA5800ES」は、最大192kHz/24bitの5.1ch再生まで対応するなど、ネットワークオーディオ向けの機能が充実したモデルだ。ソニー金井氏をたずね、オーディオ視点で話を聞いた。
“ES”型番の“ハンダ”
音へのこだわりは、縁の下の力持ち“ハンダ”にも及んだ。実は、ソニー製AVアンプの2012年モデルには「ソニー仕様、門外不出」の特製ハンダ「M700ES-FPS」が使われている。型番にESが入った珍しいハンダだ。
ソニーの“ES”(Extremely High Standard)といえば、1965年から同社の高品位のコンポーネントにのみ受け継がれてきた称号だ。その型番が非売品の“ハンダ”に付けられたのには理由がある。「2003年にハンダの非鉛化が進められ、AV機器の音質は急に落ちたことを知られていますが、われわれは自社で“高音質ハンダ”を開発しました。世界50カ所もの鉱山から錫(すず)を取り寄せ、実際に聞き比べたところ、インドネシアのある鉱山のものが良好だと分かりました。これが第1世代の“高音質ハンダ”です」。
しかし、特定の鉱山から産出されるものでは、鉱脈が尽きた時に対応できない。このため6年をかけて成分を分析し、3N(純度99.9%)のスズにアンチモンやビスマスといった十数種の微量元素が含まれていることが分かったという。「その鉱山が最近、本当に閉山してしまって。それで作ったのが、このM700ES-FPSです」(金井氏)。
M700ES-FPSは、4N(純度99.99%)の高純度スズをベースに、銅と「ヒミツの微量元素」を添加している。結晶状態が良く、銅との合金層がキレイ、スズの分子共振が少ないといった特長があるという。「結晶の導体が良いから電気を良く通す。純度の高い音が実現できました。ネットワーク基板のサンプルができたとき、試聴してみると音がおかしいので原因をさぐると、別のハンダを使っていたということもありましたね」(金井氏)。
DMCを外に出す「ES Remote」
ネットワークオーディオ再生において、もう1つ欠かせない要素が専用アプリ「ES Remote」だろう。新しいGUIをそのままの形でスマートフォンやタブレットの画面に表示でき、初期設定を除くほとんどの操作が可能だ。「オーディオ再生時、スクリーンを上げたまま(映像出力なし)操作できるのもメリット。とくにピュアオーディオ派の方は、音に影響するスクリーンを嫌います」(金井氏)。
また、DLNAのDMC(デジタルメディアコントローラー)の機能を持っている点も見逃せない。AVアンプ本体にもDMCの機能はあるが、外に出すことで余計な回路の動きを抑えることができるからだ。ほかにもネットワークオーディオを聴く際にはHDMI回路を自動的にオフにしてくれたりと、“かゆいところに手が届く”仕様だ。
最後に、開発者から見たネットワークオーディオの魅力について聞いた。「昔、200万円もする高級CDプレーヤーを作りました。CD再生時のサーボノイズを押さえ込むため、物量をかけたのです。しかし、ネットワークオーディオはその必要がない。CDをリッピングしておけば、『TA-DA5800ES』はもちろん、同じネットワークエンジンを搭載した8万4000円の『STR-DN2030』でも、200万円のCDプレーヤーと同じ“良い状態”で再生できます。お買い得でしょう?」(金井氏)。
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