ぜひ見ておきたい高画質&高音質Blu-ray Discたち――「第6回DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」(後編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)
前回に続き、「第6回DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」の授賞作品とノミネート作品から、審査委員長を務めるAV評論家・麻倉怜士氏の琴線に触れた作品をピックアップ。今後のBD鑑賞の参考にどうぞ。
ベスト高音質賞・映像部門 「007 スカイフォール」
麻倉氏: ベスト高音質賞・映像部門では、単に音が良いだけでなく、サラウンドの仕掛けが問われます。その点、「007 スカイフォール」は素晴らしい。牧場で家を爆破するシーンでは、爆音のほかに銃声やヘリの音、セリフ、BGMまであらゆる情報が入っていて、それぞれのクオリティーも高い。音場全体としての鳴り方が緻密(ちみつ)で濃密です。映画サウンドとして優れているのは間違いないでしょう。
ほかのノミネート作では、「ニールヤング ジャーニーズ」も優れたコンテンツです。これは96kHz/24bitのハイレゾ収録音源をDTS-HD MAフォーマットでBD化しました。小さなライブハウスですが、その音響は実に緻密で濃密。音域が広く低域も雄大、声の伸びもヒューマンです。スカイフォールとは全く切り口が異なりますが、どちらも捨てがたいと思いました。
ベスト高音質賞・音楽部門はBDオーディオの2作品
麻倉氏: ベスト高音質賞・音楽部門(クラシック)を受賞した「アントン・ブルックナー:交響曲第4.7.8番 ケント・ナガノ指揮・バイエルン国立管弦楽」、そして音楽部門(ポップス他)を受賞した「Before Meteor FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack」は、いずれもBDオーディオです。この点も少し問題含みでしょう。音質の良し悪しを判断する部門で、リソースのすべてを音につぎ込んだBDオーディオに勝てるBDはありません。ほかの映像作品とは別に考えるべきだと思います。
さて、まずブルックナーですが、誰が聴いても圧倒的なサウンドです。バイエルンのオーケストラが持っている音楽の大きさ、素晴らしさ、さまざまな観点からここまでリアルな音響を聴かせてくれるパッケージも珍しいと思いました。過去のパッケージメディアすべてを含めても最高の音といっても過言ではないでしょう。
一方の「Before Meteor FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack」は、バーニー・グラントマン・スタジオの前田さんが開発したBDM(Blu-ray Disc Music)です。前述のブルックナーは本当に音だけですが、こちらはゲームに登場する国の世界観を生かしたプレイリストを作っています。音はクリアーでヌケが良い、圧倒的な音質ですね。
グランプリ 「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」
麻倉氏: グランプリは各ジャンルの受賞作品から選ばれますが、今回は「ベストBlu-ray 3D賞」を受賞した「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」が選ばれました。3Dテレビの文化は停滞気味で、一時期のテレビ新製品には大抵3D表示機能が搭載されていましたが、最近では機能を排除する動きもあります。また、機能は持っていても3D視聴に必要な専用メガネは別売になるなど、ユーザーが3Dに触れる機会も減ってきているのが現状です。
しかし、映画制作の現場では、たいへん優れた作品が作られています。昨年グランプリを受賞した「ヒューゴの不思議な冒険」に続き、今年の「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」と2年連続でBlu-ray 3Dがグランプリを受賞したのも示唆的です。
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」では、非常に効果的に3D効果を作品に生かしました。例えば船の上でトビウオがおそってくるシーンの距離感、すれ違う際の近接感など、圧倒されます。また、このシーンだけ上下に黒帯が付き、画角が21:1に変わるのですが、実はこの黒帯もコンテンツの1部。フレームの外からでもトビウオが飛んでくるという、緊迫感をあおる演出なのです。
単なる画質の良さにとどまらず、3Dを巧みに使って演出したという点で、「ライフ・オブ・パイ〜」がグランプリに選出されました。映像の素晴らしさ、物語の面白さが3D効果もさらに増します。トータルで映画の世界が楽しめるという点で、まさしく今年のBD最高傑作といっても過言ではないでしょう。
関連キーワード
アワード | 3D | 麻倉怜士 | 高画質 | 高音質 | Blu-ray | 審査 | グランプリ | アニメ | ファイナルファンタジー | NHK | Blu-ray 3D | デジタル閻魔帳 | ハイレゾリューション | 水樹奈々
関連記事
- ぜひ見ておきたい高画質&高音質Blu-ray Discたち――「第6回DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」(前編)
「第6回DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」の授賞式が2月中旬に行われ、15作品が受賞した。審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に今年の傾向と注目作品について詳しく聞いていこう。 - 3DにBDオーディオ、ブルーレイ大賞が示したBDの新しい可能性(前編)
5回目となる「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」が決まった。今回も各部門賞の受賞作品について、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらおう。今年も読めば見たくなるBlu-ray Discがてんこ盛り。 - 3DにBDオーディオ、ブルーレイ大賞が示したBDの新しい可能性(後編)
前編に続き、「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」各部門賞の受賞作品について、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらおう。 - グランプリ「山猫」の衝撃――ブルーレイ大賞の舞台裏(前編)
15日に発表された「第4回 DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」。グランプリに輝いたのは、なんと1963年公開の「山猫」だった。受賞理由と選考の経緯について、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらおう。 - ノミネートする部門で明暗が分かれる?――ブルーレイ大賞の舞台裏(後編)
2月15日に発表された「第4回 DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」。後編では部門別の傾向と受賞作について、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらおう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.