きっとお気に入りの1本が見つかる――イヤフォン・バイヤーズガイド2014年“春”(実売2万〜3万円編):3匹が聴く!(2/2 ページ)
“高級機”と呼ばれる価格帯に入り、見た目も中身もかなり特長のある製品が増えてきた。激戦の価格帯で高く評価されたイヤフォンは果たして……? ミニコーナーでは、ニュースでひんぱんに出てくる「インピーダンス」を解説。
Westone「W20」
米Westone Laboratoriesの「Wシリーズ」は、「Westone1〜4」の後継となるモニターイヤフォン。昨年末に「W10」「W20」「W30」「W40」という4製品が発売された。
今回の「W20」は、高域用と低域用×2のバランスド・アーマチュア型ドライバー搭載を搭載した2Way3ドライバー構成。付属のフェイスプレートを付け替えることでカスタマイズハウジング、MMCXコネクターによる着脱式ケーブルも特長だ。また、リモコン/マイク付きケーブルや防滴仕様の「モニターヴォルトケース」が同梱(どうこん)されるなどパッケージとしての内容も充実した。
野村 ☆☆☆
「W10」と比べると広がり感、ダイナミック感がある。高い評価は出せないものの、印象的なサウンドを聴かせようとする音色傾向は悪くない。高域を自然に伸ばして、イキイキとしたサウンドに仕上げた点も好感が持てる。
坂井 ☆☆☆☆
ロック、ピアノ、J-popと幅広いジャンルの音が聴ける1本という印象。中高域もしっかりと音が聴こえてくるし、変な癖も感じられない。耳にするっと入り、フィット感も悪くないものの、もう一歩のびしろがある気がする。
滝田 ☆☆☆☆
高いレベルでのオールマイティ感が備わっている。全体のバランスだとやや低域が強い感じながら、ディテールもBAならではの表現力。耳掛け式にしては、すごくカジュアルに装着できるので、毎日使うのにいいかも。
KEF「M200」
スピーカーメーカーとして知られるKEFが投入したデュアルダイナミックドライバー構成のカナル型イヤフォン。中高域用の5.5ミリ径、低域用の10ミリ径ユニットを搭載し、アルミ製ハウジングには低域を補完するチャンバー構造を設けた。
「セキュアアーム」と呼ばれるフレキシブルな耳掛けハンガーも特長。耳の形に合わせて形状を調整できるため、安定した装着性を実現するという。ただ、欧米人にあわせて作られた仕組みは日本人の耳に合うのか?
野村 ☆☆☆
このイヤーハンガーと円筒形の筐体は大柄で、装着感が日本人向きじゃないかも。音質やデザインに関しては丁寧でいい感じだけに、本当にもったいない。イヤーチップのバリエーションをもう少し増やしたら印象変わりそう。
坂井 ☆☆☆☆
デザインはシンプルで非常にクール。音は落ち着いた印象。ダブステップなどはゴリゴリした低音が気もちいいが、高域は埋もれがち。奥まで突っ込むことで装着はできたものの、外した後の開放感は気持ちがいいのは事実。
滝田 ☆☆
日本人の多くは、この硬めのイヤーハンガーや円筒形の筐体を上手に装着できる人は少ないのでは? リスニング以前にストレスを感じてしまう。シルバーの筐体はMacなどともマッチ。デザイン性は抜群なだけにもったいない。
Audiofly「AF78」
オーストラリアに本拠を構えるAudiofly(オーディオフライ)のハイエンドモデル。カナル型イヤフォンを中心に展開するヘッドフォン専業メーカーで、日本ではタイムロードが取り扱っている。
「AF78」は、バランスド・アーマチュア型ドライバーと9ミリ径ダイナミック型ドライバーを搭載するハイブリッドタイプ。またケーブルには、軽くて丈夫なコーデュラファイバーとケブラーを編み上げた「Audioflex」と呼ぶ独自開発のアウター素材を採用しており、絡みにくい点も特長だ。
野村 ☆☆☆☆☆
音楽性の豊かさ、表現力ともに申し分のない1本。ダイナミック型とBAのハイブリッドドライバーにも関わらず、スムーズな繋がりで、違和感をほとんど感じさせない、キレの良さとフォーカス感の高さも合わせ持つ。オススメ。
坂井 ☆☆☆☆☆
音場が広く、ダイナミックで、音楽を聴いていて楽しくなる1本。音量を大きくすると、やや粗さも出るものの、高域が埋もれすぎず、やりすぎないツヤ感も出ていて、ボーカルものも、特に女性の声が明瞭。好印象な一本。
滝田 ☆☆☆☆☆
高音がよりクリアーに響き、伸びやかな感じがいい。大音量にしても刺さらないので、聴いていて気持ちがいい。低音もピュアに響き、臨場感も感じさせる。個性的なハウジング形状もオシャレ。ハイレベルにまとまっている。
JVC「FX750」
JVCが2月下旬に投入したばかりの新製品。筐体や振動板に木製素材を使用した「ウッドシリーズ」のミドルレンジモデルにあたり、薄膜加工した木材を振動板のセンター部分にはりつけた「ウッドドーム振動板」やダンパー構造、木製のデフューザーなど、かなり複雑な構造をしている。
まるで伝統工芸品のように作り込まれたイヤフォンは、同じく木製のハウジングに収められ、なんともいえない温かみのある外観。そのデザインに対する評価も気になるところだ。
野村 ☆☆☆☆☆
屋外で使うのにちょうどいいバランスに仕上がった1本。ウッドコーンには小編成のオーケストラやアコースティックがとくにマッチ。昔のロックの名盤なども。ウッドが自然に解像感を減衰していて、聴いていると気持ちがいい。
坂井 ☆☆☆☆
ウッディで、アイテムとしてちゃんと温もりを感じさせてくれるのがうれしい。見た目に対して、鳴り響く音がしっくり来るので安心感がある。今時、ここまで手間をかけて作るのはJVCならでは。ケーブルに一工夫あれば……。
滝田 ☆☆☆☆☆
木製のハウジングで作れるのは、日本国内でもJVCぐらい? 背景にあるストーリーも含めて、音を聴くと、その木製のなかでナチュラルに響く音が、さらに良く聞こえる。モノとして手に取った瞬間欲しくなる質の高さも評価したい。
まとめ
バラエティーに富んだ製品が並べられたが、名だたる大手メーカーの製品を抑えて最も高い評価を獲得したのは、オーストラリアの新興ブランド“Audiofly”の「AF78」だった。同社は2009年に設立されたばかりのベンチャー企業だが、専業メーカーならではのコダワリが感じられる1本だ。
次点はJVCのウッドシリーズ最新作「FX750」。「楽器をチューニングするように開発した」という製品は、満点まであと一歩の14点を獲得した。2万円台という価格はそれなりに高価だが、いずれも価格以上の価値を感じさせてくれる“Good Buy”製品といえそうだ。
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