重くてデカくて良いですなぁ――ソニー14年ぶりの本格プリメイン「TA-A1ES」:潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)
昨年、ソニーの“ハイレゾ宣言”とともに登場したES型番のプリメインアンプ「TA-A1ES」。久しぶりの本格アンプを、アンニュイなボーカルのカレン・ソウサ「エッセンシャルズ」で試してみよう。
試聴にはカレン・ソウサのデビューアルバム「エッセンシャルズ」から1曲目の「君は完璧さ」と3曲目の「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」を使った。1曲目はカルチャー・クラブ、3曲目はビートルズの楽曲のカバーだが、どれもカレン色に染まっている。アルゼンチンのブエノスアイレス出身という異色のジャズシンガーの、妖艶ともいえる容姿とアンニュイなボーカルは一度聴いたら病みつき必至かも……。
音は素直にして純粋。飾り気がないというかお化粧は最小限。素肌美人の雰囲気で彼女の持ち味をストレートに伝えるサウンドだ。加えていざという時のエネルギーの出し方が凄いのもこのモデルの特徴である。前述した贅沢(ぜいたく)な電源回路の恵みは、低域にかけての厚みをしっかりと描き出す。
組み合わせるスピーカーはフロアスタンディングでもブックシェルフでも良いが、このアンプはスピーカーの素性をストレートに描き出すので、出来るだけ歪(ひずみ)の少ない反応に優れた製品を選びたい。
そしてもうひとつ、このモデルは高級ヘッドフォンアンプとしても活用の途を開く。ぼくは家に帰ってまでヘッドフォンで聴くのはいかがなものかと記してきたが、都会で暮らすオーディオファンにとって深夜の大音量再生はなかなかに難しい。そうした人の楽しみまで奪うつもりはないし、良質のアンプで鳴らすヘッドフォンは良い音を奏でる。このモデルはメインのパワーブロックからヘッドフォン出力を取り出すのではなく、専用のアンプを組み込みインピーダンスの切替までできるようになっているのだ。
試聴にはシュアの「SRH1840」を用いたが、レンジ感のあるさわやかなサウンドが楽しめた。響きもきれいでリバーブ感も丁寧に再現し、この製品の持ち味をたっぷりと聴かせてくれた。
ヘッドフォンを使うときは、ヘッドフォンジャックの横にある専用のセレクターでインピーダンスの切り替えを行う。「Lo」は50オームまで、「Mid」は50〜300オーム、「Hi」は300〜600オームの製品に適合する。今回は「Lo」で用いた。
ヘッドフォン・モードにするとボリュームがいったん「ゼロ」になる。インピーダンスを切り替えても「ゼロ」になるためヘッドフォンを差し込んだらいきなり大音量という事態も起こらないが、インピーダンスに応じて電圧まで調整するのでミューティングの時間が長いためその前にボリュームを上げないようにしたい。
またヘッドフォン再生からスピーカー再生に切り替えてもボリュームがゼロにリセットされるので、ヘッドフォンを抜いたら大音量という事件も起こらない。使い込むほどにこんなところにまで細やかな気配りをしていたのかと感心させられる心憎いプリメインアンプである。
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