“重低音の先駆け”がついにハイレゾ対応! オーディオテクニカ「SOLID BASS」開発者に聞いた新技術の数々(4/4 ページ)
ハイレゾ対応による鮮やかな重低音再生という新機軸を打ち出したオーディオテクニカの「SOLID BASS」。その開発意図と技術について、ヘッドフォンの最上位モデル「ATH-WS1100」とイヤフォンの「ATH-CKS1100」を中心に詳しい話を聞いた。
新設計の「A2DCコネクター」を採用した理由とは
「ATH-CKS1100」はリケーブル対応のイヤフォンだが、専用設計の「A2DC(Audio Designed Detachable Coaxial)コネクター」を採用している。一般的に普及しているMMCXをベースに開発された同軸系のコネクターだが、接続互換性はない。今回のモデルから採用が始まり、同時期にオーディオテクニカが発売する「EARSUITシリーズ」にも採用される。新形状のコネクターを開発した理由を、奈良氏は次のように語っている。
「オーディオテクニカでは以前、『ATH-CK100PRO』というイヤフォンでMMCXコネクターを採用した実績があります。オーディオ用イヤフォンの着脱コネクターとしては、接点の品質であったり、軸が回転することによって生まれるノイズの課題がありました。ここをもっと良くできるのではないかという発想から、コネクターの小さいサイズ感をキープしつつ、より音質や耐久性、ハンドリング性の良いA2DCを開発しました」
「発表直後には『なぜ互換性がない端子を敢えて使うのか』という疑問の声をいただくこともありましたが、コネクターが破損してしまうと、けっして安くはない価格で買っていただいたイヤフォンが楽しめなくなってしまいます。いい音を長く楽しんでもらいたいというメーカーの思いから生まれた新しい端子であることを、これからも丁寧にご説明していきたいと思っています。そしてこの新しい試みを、まず製品として成立させるため今回のイヤフォンに搭載しましたが、汎用性が見えてくれば他のモデルへの展開や、リケーブルの商品化も検討していきたいと思っています」
なおケーブルはピンプラグの直後からL/Rチャンネルを独立させたスタッカード撚り線を採用することで、クロストークノイズの発生を抑えてよりピュアな再生環境を実現する。イヤーピースはシリーズの旧機種から採用する「2ポジションポスト」に対応。イヤーピースを外すと、ノズルに溝が設けられており、イヤーピースの装着位置がアレンジできる。イヤーピースをドライバーの方向に押し込むと従来ポジションでの試聴なり、手前側に引くとよりディープな位置に装着ができる。平山氏は本機能の狙いについて、「密閉性はイヤーピースのサイズでも調整できますが、耳の形状はユーザーによっても千差万別です。重低音と密閉性は密接な関係性にあるので、密閉性をさらに向上させる機能として初代のモデルから採用を続けています」と説く。
デザインは「まず音ありき」で決まる
本体のデザインは「ATH-WS1100」「ATH-CKS1100」ともにフラグシップの貫禄にあふれている。カラーリングもメタル素材の質感を生かした上品な大人っぽい仕上がりだ。そのコンセプトについて奈良氏は「まず音質ありきという考え方から生まれたもの」であることを強調する。
「オーディオテクニカのヘッドフォン、イヤフォンは音作りありきの機能美を重視してデザインされています。ATH-WS1100については、53ミリ口径のドライバーをダイナミックに動かしながら、共振を押さ込むためふんだんにアルミを使っています。これを着色したら、デザインのインパクトになったというもので、結果的に全体のリッチさにつながったのだと思っています。オーディオテクニカのものづくりとしては、まず音質を最重要視しながら丁寧にデザインを考えていくことで、自ずと他の製品と差別化ができると考えています」(奈良氏)
平山氏はSOLID BASSを新しくする目的は、即ち新しい音楽体験を提供することだったと振り返る。音源がますます多様化する中で、重低音に深みのあるハイレゾをSOLID BASSで聴けば、これがきっかけとなってより深く音楽リスニングにはまってくれるユーザーが増えるのではと期待を寄せる。さらに、奈良氏も、シリーズの全モデルを一気にリニューアルしたことで、従来からSOLID BASSシリーズを愛用しているユーザーから、新規に触れる音楽ファンまで幅広い層に魅力を響かせたいと意気込む。
ヘッドフォン&イヤフォンのスペシャリストであるオーディオテクニカが、真面目に“重低音+ハイレゾ”を徹底的追求したSOLID BASSシリーズのサウンドにぜひ触れてみてほしい。
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