「もう一度、本物のもの作りに挑戦する」――ティアックのリブランド戦略とは?(2/2 ページ)
設立から63年、老舗オーディオメーカーのティアックが変わろうとしている。同社は、「NEW VINTAGE」をキーワードにした新製品2機種を披露するとともに「ブランドを再構築する」とぶち上げた。
部屋やインテリアとコーディネートするオーディオ
一方、「参考展示」として紹介された「WS-A70」は、ユニークな布製グリルを採用した一体型ネットワークオーディオだ。「木と布」をテーマにしたデザインで、キャビネットはウォルナット突き板仕上げ、布製のグリルは、テキスタイルブランド「NUNO」とのコラボレーションでデザインしたものだ。
さらに別売オプションとして着せ替え用の布製グリルを豊富に用意する予定。「季節の移り変わりや気分、インテリアに合わせてコーディネートできる」という。天面には操作部とLEDイルミネーションを装備。簡単操作とともに照明インテリアとしても存在感を示す。
スピーカーは、同軸2Wayを左右2基、さらに背面にパッシブラジエーター2基という構成。アンプにはICE PowerのクラスDアンプを採用し、ハイレゾ再生にも対応する計画だ。
Wi-FiやBluetooth(LDAC対応)といった通信機能もサポート。その上で「AirPlay」や「GoogleCast for Audio」「Spotify Connect」などを盛り込んだネットワークミュージックシステムとなる。さらに独自のマルチルーム再生対応アプリも開発するという。
発売時期は2017年春で、価格は未定。なお、布製グリルについては、「種類はかなり用意しようと思っている。販売方法のイメージは、本体を購入した人が店頭やネットでサンプルを見てオーダーしてもらう形を考えている」(大島氏)
「昔はすごいティアックファンだった」
発表会には、ゲストスピーカーとしてAV評論家の麻倉怜士氏が登壇し、厳しい指摘を交えながら新生ティアックへの期待を語った。
冒頭、「昔はすごいティアックファンだった」とあえて“過去形”で話を始めた麻倉氏。新聞社に勤めはじめた1970年代、「つまらない独身生活」を癒してくれたのが、ティアックのオープンリールデッキ「A-4300」だったという。「月給6万円の頃に初めて購入したカセットデッキは『A-20』(1973年)、ピアノキーは復活してほしいですね」など、かつてのヘビーユーザーぶりを披露した。
「でも、最近のティアックはどこにでもあるものばかり作っている。これはいけないとハッキリ言いました」(麻倉氏)
ティアックから相談を受けた麻倉氏は、同社が持つノウハウやリソースの再活用を提案する。それは高級オーディオのエソテリックであり、音楽制作の現場に浸透しているTASCAMだ。「ティアックの中には“いい音”がある。エソテリックの音は、質感が際立って良い。音と音の間の余韻に美がある。音楽制作のTASCAMも生かさない手はない」。一方で製品コンセプトやデザインといった部分では社外リソースも積極的に活用することを勧めた。
具体的な製品の姿として挙げたのは、欧州でトレンドとなっている“メディア一体型プリメインアンプ”だ。例えば英ARCAMの「SOLO-MUSIC」、同じく英CYRUSの「LYRIC09」などは、CDやラジオからネット配信まで新旧の幅広いメディア再生が可能でありながら、一体型ならではの簡単な操作性により、誰でも手軽に良い音を楽しめる。オーディオファンというよりは、オーディオも好きな音楽ファンに向けた製品となる。
「音楽ファンに上質な音体験をもたらすこと。音が好きな新しいユーザーたちが求める新ジャンル(の製品)があるのではないでしょうか」(麻倉氏)
社内のリソースや社外のアドバイスも生かし、原点回帰と同時に新ジャンルへの挑戦を始めたティアック。メーカーとしての実力が試されるのはこれからだ。
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