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» 2007年05月06日 19時40分 公開

フランスの大統領選、勝っても問題山積み藤田正美の時事日想

サルコジ候補の優勢が伝えられているフランス大統領選。最大の課題――経済の活性化を実現できるのか、注目が集まる。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:《藤田正美》

「ニューズウィーク日本版」元編集長。 東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」


 フランスの大統領選挙は5月6日に、決選投票で雌雄を決することになった。その第2ラウンドに臨むのは、右から国民運動連合ニコラ・サルコジ党首、左からは社会党のセゴレーヌ・ロワイヤル元環境相だ。

 第1ラウンドが終わった4月22日時点では、サルコジ候補が優位と伝えられている。世論調査での支持率が50%を越えているのが大きい。ロワイヤル候補は、22日の投票で3位となったバイル氏の支持層を取り込む必要がある。さもなければサルコジ氏に勝つのは、厳しい状況だと言われている。前回よりも大幅にバイル氏は得票を伸ばし、18.5%を獲得したからだ。

経済活性化が大きな課題

 もしサルコジ氏が決選投票で勝ったとしても、問題は山積みしている。フランスが抱える最大の課題は、経済を活性化させることだ。かつては、1人当たりのGDP(国内総生産)で世界第7位だった。しかし、現在は17位にまで落ちてしまった。失業率は2けたを切っているものの、9%台後半で推移している。

 フランスは2000年に、週の労働時間を35時間に制限した。1人あたりの労働時間を減らすことで、多くの人に職を与えるというのが政府の狙いだった。しかし期待は外れ、失業率は下がらなかった。さらに労働時間を減らしたが、賃金は下げなかった。これは企業にとって、賃上げと同じことを意味する。5時間分の労働者の雇用が進まなかったのだ。

 この35時間規制を撤廃することをサルコジ氏は明言していない。ただ35時間を越えれば、残業量や税金を免除することで、規制を骨抜きにしようとしている。また個人の所得税や相続税などの減税に踏み切る構えだ。減税を実施するとともに、増え続ける公的債務を減らすという。

改革派のサルコジ氏だが実行力に疑問

 もしサルコジ氏が大統領に就任しても、こうした改革を実行できるかどうかは疑問だ。ドイツやイギリスと違ってフランスは、国が経済に大きく関与している国である。日本流の産業政策にも熱心で、企業の国有化にも力を入れている。イギリスはサッチャー首相の時代に、民営化政策を導入してきたが、フランスは自由化の波から取り残されてきた。それが現在の財政疲弊を招き、企業の競争力を失わせることになった。

 サルコジ氏は改革派を自任しており、改革しなければフランス経済の地盤沈下も止まらないという考えだ。しかし、労働時間の規制を取り払おうとすれば、失業率の高い若年労働者や移民などの不満がうっ積するだろう。実際、サルコジ大統領が誕生したら、大規模デモの行動に出るという組織もある。サルコジ氏は治安を強化すると言うものの、これは第1ラウンドで、極右のルペン候補から票を奪う作戦だった。本気で社会不安を招きかねないような政策を追求するかは疑問だ。フランス経済が地盤沈下を続ければ、EUの中で主導権を持つことが難しくなる可能性がある。

 かつて4半世紀にわたって左のミッテラン、右のシラクが大統領を務めてきた。しかし、右も左もフランス経済の病巣を切除し、活力を取り戻すことは出来なかった。右または左と言えども、フランス社会の社会民主主義的な考え方から離れることは難しい。社会的サービスの質を落とすことなく減税をし、財政再建を実現するというサルコジ氏の政策は、机上の空論になりかねない。

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