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» 2007年06月18日 02時00分 公開

インドと中国の経済成長は順調に続くのか 藤田正美の時事日想

急成長を続けるBRICs4カ国。中でも中国は2016年に、インドは2030年頃にはGDPで日本を抜くだろうと目されている。爆発的な経済成長を続けるこの2国に、不安材料はないのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

 米国の投資銀行ゴールドマン・サックスが、調査リポートでBRICsを「命名」したのは2003年のことだ。ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国が今後急発展する国として注目されるというのがその内容である(参照リンク)。そのリポートではGDP将来推計がある。中国は2016年に日本を抜いて世界第2位に、2040年前後には米国も抜く。そしてインドは2030年前後に日本を抜き、2050年頃には米国に迫るという。

 中国が日本を抜くのはおそらくもっと早い時期になるだろうし、為替レートで換算せず、購買力平価で換算するともうすでに抜かれているかもしれない。しかし問題がないわけではない。ゴールドマン・サックスのこのリポートでは、中国のカントリーリスクはおそらく計算に入っていない。中国という世界最大の人口を抱える国が、このまま政治的に今の形を保つことができるのか、政治体制が変わるとしたらその変化が「漸進的」なもので済むのか。これはなかなか予測しがたい問題である。

ロシアと中国のカントリーリスク

 実際、ロシアの場合は、ソ連が崩壊した後、民主化の方向に向かったが、社会も経済も大混乱した。挙げ句の果てに超大国の座から滑り落ちて、1998年には通貨危機に陥った。その結果、対外債務の支払いが不可能になったのである。しかしそれからロシアは復活した。外貨準備高も3700億ドルに達し、対外債務も実質的にはゼロになった。この経済の大復活は、自助努力というよりも原油相場の値上がりという他律的なものだ。

 中国の場合、ロシアよりは産業の基盤がずっと厚いし、現在は世界の工場といわれるほど生産拠点が集積している。その意味では政治体制が変わったとしてもロシアほど混乱することはないかもしれないが、問題は中国という大国自身の重さにある。ロシアに比べても人口は10倍。しかも地域による経済格差は大きい。中国の沿岸部と内陸部で最も差が大きい地域を比べた場合、13倍近いという調査研究がある(参照リンク)。日本でも最近、地域格差が問題になっているが、東京と沖縄を比べた場合、1人当たり県民所得の格差は10対4だ(参照リンク、PDF)

 政治体制が揺らいだときに、この格差がどう社会を左右するか、これは予測し難い。ロシアよりも経済の基盤が厚いからそれほど大きな混乱はないという見方もできるだろうし、地方とりわけ内陸部の不満が爆発すれば、そう簡単には収まらないという見方もできる。

インドの強さと弱さは

 一方、インドは民主主義国だ。中国との大きな違いがそこにある。独裁的な国家と違って、ある程度、政府の方針やら政策を予測することができるということは、インドに進出しようとする外国資本に大きな安心感を与える。米国が従来の原則を変えてまでインドに原子力協力を申し出ることができたのも、「世界最大の民主主義国家」という理屈を立てることができたからだ(ただこの原子力協力は交渉が難航している、5月21日の記事参照)。

 もちろんインドにも弱みがある。それは中国にはない階級制度である。ある中国人の女性がこう言ったことがある。「1949年以来、中国では男女平等です」。それに民族的、宗教的な社会の緊張度はかなり小さい。それに比べると、インドでは歴史に根ざした階級制度という桎梏がいまだに残る。社会が豊かになれば階級という不条理な制約はやがて薄れるのかもしれないが、今はまだ弱者救済(大学入学枠を確保するなど)に頼らざるを得ない。そしてこうした留保枠は、「逆差別」だとして反発も受けている。

 中国が政治的に成熟するのが先か、インドの社会が歴史の桎梏を乗り越えるのが先か、非常に興味深いところだ。2004年の時点で中国に進出している日本企業は2万を越えている(参照リンク)。それに対してインドに進出している日本企業は2006年の時点でも300社をわずかに上回る程度に過ぎない(参照リンク)。これから日本企業はどう動くのだろうか。

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