連載
» 2007年09月27日 09時32分 公開

付けヒゲが密かな人気――オトコの中に眠る変身願望保田隆明の時事日想

かつらメーカーが作る、使い捨ての“付けヒゲ”が人気だという。先日試してみたところ、かなり印象が変わることに驚いた。男性が簡単に“変身”気分を味わえる商品には、ビジネスチャンスが眠っているのでは?

[保田隆明,Business Media 誠]

著者プロフィール:《保田隆明》

やわらか系エコノミスト。外資系投資銀行2社で企業のM&A、企業財務戦略アドバイザリーを経たのち、起業し日本で3番目のSNSサイト「トモモト」を運営(現在は閉鎖)。その後ベンチャーキャピタル業を経て、現在はワクワク経済研究所代表として、日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシー向上を目指し、経済、金融について柔らかく解説している。主な著書は「M&A時代 企業価値のホントの考え方」「投資事業組合とは何か」「なぜ株式投資はもうからないのか」「株式市場とM&A」「投資銀行青春白書」など。日本テレビやラジオNikkeiではビジネストレンドの番組を担当。ITmedia Anchordeskでは、IT&ネット分野の金融・経済コラムを連載中。公式サイト:http://wkwk.tv/ブログ:http://wkwk.tv/chou


 人工頭髪を作っているプロピアが最近男性向けの付けヒゲの販売を開始し、密かな人気だという。先日、出演しているテレビ番組で付けヒゲを取材し、実際にスタジオで装着してみる機会があった。

 私はヒゲの量が非常に少なく、ヒゲを伸ばしたとしても「サザエさん」の波平さんと「オバケのQ太郎」の髪の毛を足したぐらいの本数にしかならないので格好悪い。こういう人間にとってはヒゲを伸ばすという選択肢はない。従って、今までヒゲのある自分の顔を見たことはなかった。

瞬時に変身が可能

 さて、実際に付けヒゲを装着してみると、何とも言えない変な感覚になる。照れるのは間違いないが、照れている自分を鏡で見るのもまた気持ち悪い。しかも、ヒゲがある自分の顔を見るのが初めての経験なので、それが客観的に見て似合っているのかどうかも分からないのだ。しかしヒゲのある自分の顔を見て、イヤだとは思わなかった。そして、ここが重要なのだが、明らかに一種の変身を遂げたのである。「ヒゲ1つで結構印象が変わるもんだなあ」と素直に感心したのであった。

付けひげビフォーアフター。写真ではくちヒゲ、くち下ヒゲ、あごヒゲの3種類を付けている。プロピアのサイトより

 かつての付けヒゲといえば、ドリフターズの“ヒゲダンス”のあのヒゲを思い出す。当時の付けヒゲは伸縮性があまりなく、どうしても「異物を付けている」という感覚が取れなかったそうである。しかし今回の付けヒゲは、付けているうちに顔から染み出る皮脂となじみ、つけているという感覚がなくなるとのこと。私は番組用に15分くらいしか付けただけだったのでそこまでは分からなかったが、確かにあまり違和感はなかった。

1つ3000円は安いのか高いのか

 さて、この付けヒゲの価格は2000〜3500円程度。使い捨てで1日〜2日は持つとのこと。これを安いと見るか、高いと見るか。顔周りのファッションという観点で考えると、男性が理髪代にかけるお金は月に5000円程度であろう。「追加1000円でトリートメントをいかがですか?」と理髪店の店員に言われても「結構です」と即答する人が多いだろうことから考えると、1〜2日しか持たないものに対して3000円前後を投入するというのは、結構な金額に思える。

 しかし、眼に見える効果があまりないトリートメントに対し、付けヒゲは付けた瞬間に変身できるという分かりやすい効果がある。一般に男性は女性に比べるとファッション感度が低いが、それは分かりやすい変身ぶりに直面する機会が乏しいからであって、そういう分かりやすさを訴求するファッションものであれば、男性の財布の紐が緩む余地があるのではないかと思った。男性のオシャレ熱が高まっているときは景気がいい証拠だと言われるが、給料が増えるわけでもない昨今3000円の付けヒゲが流行るのは、景気のせいではなく、男性の眠れる変身願望そのものを上手につかんだからだろう。

男性の変身ビジネスはまだまだ拡大可能…?

 思えば我々日本男子は、幼少の頃から仮面ライダーやタイガーマスク、そしてパーマンなど、変身ものに囲まれて育ってきた。仮面ライダーの「変身!」というポーズをやったことがない人はいないだろうし、多くの人があの変身用のベルトを親にねだった記憶があるのではないだろうか。そう考えると、我々の変身願望というのは体の奥底に眠っている欲望であり、それを刺激するのはいい商売になるのではないかと思ったりもする。

 女性の場合は、化粧、髪の毛の長さ、スカートの丈、肌の露出具合など、様々な形で日々“変身”を楽しんでいる。しかし男性の場合は、変身する機会があまりない。これは機会がないだけの話であり、変身願望がないわけではないのだ。

 付けヒゲをきっかけに、「変身をすることは楽しい、普通のこと」という感覚が多くの男性の中に浸透すれば、今では薄毛を隠すために利用されることが多い人工頭髪を、変身用に利用するという発想も生まれてくるかもしれない。つまり、人工頭髪がより市民権を得るという流れである。こうなると付けヒゲの発売元であるプロピアにとっても、本業とのシナジー効果抜群ということになろう。

 ところで多くの男性にとって気になるのは、付けヒゲでモテるようになるのかという点である。デートで使うお店を3000円程度上乗せしてワンランク高いお店を選択するのと、付けヒゲをつけてイメチェンするのとでは、相手に与える驚き度合いにおいては後者に軍配が上がるだろう。しかし、驚きを与えること、イコール、モテとは限らない。このあたりは、女性の率直な意見を伺いたいところである。メガネ男子ならぬヒゲ男子好きは果たしてどの程度いるのであろうか。

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