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» 2007年12月14日 10時05分 UPDATE

首都高の均一料金は忘年会の“割り勘”と同じ?

2008年度からの導入を目指す首都高の新料金体系について、シンポジウムが開かれた。「実質的に距離別料金は値上げ」と批判がある中で、首都高速道路は改めて否定した。

[土肥義則,Business Media 誠]

 2008年度中に首都高の新料金体系の導入を目指す首都高速道路(別記事参照)。現在の首都高は均一の料金体系だが、新料金案ではETCを利用した距離別料金制となっている。現在の東京線は一律700円だが、距離別料金制になると400円〜1200円。この料金は原則としてETCの利用者のみで、現金で支払った場合一律1200円となり、現行よりも500円高くなる。

 首都高速道路が示した新料金に賛否両論がある中で、NPO法人のmobility21は12月13日、シンポジウム「首都高 高速道路の未来を考える」を都内のホテルで開催した。大学教授やジャーナリスト、首都高速道路の関係者らが参加し、さまざまな立場から新料金について議論した。

分かりにくい新料金体系

yd_sugiyama.jpg 早稲田大学の杉山雅洋教授

 冒頭、「首都圏の高速道路のあり方と課題」と題し、早稲田大学の杉山雅洋教授が講演。1962年に1号羽田線が開通した首都高は4.5キロメートルだったが、現在では286.8キロメートルに拡大した。首都高のネットワークが広がった理由として「東京には独自性、多様性、市場性がある。それを支えてきたのが道路であった」と、インフラが大きな要因であったことを強調した。

 「1987年には都心環状線が整備されたが、まだまだ規模が小さかった。現在ではネットワークが蜜になったものの、まだ道路がつながっていないところが残っている」と課題を指摘した。

 首都高速道路(旧公団)は2005年、経営の効率化を図るため民営化となった。そして民営化後45年以内に首都高の「無料化実現」を掲げた。

 「無料化は好ましい選択肢なのか。無料化になると一般道路並みの交通量となり、早く目的地に行きたいと思う人のデメリットになる」とし、45年後の無料化については「利用者からすれば分かりにくい」と語った。

ETCと首都高Xは一長一短

yd_wata.jpg 首都高速道路の渡口潔氏

 続いて「首都高ネットワークを支える距離別料金制導入の意義」と題し、首都高速道路の渡口潔氏が、新料金とプリペイド・匿名の電子マネー方式「首都高X」(別記事参照)について話した。

 距離別の新料金について「忘年会での支払いで割り勘にすると、得する人と損する人がいる。損をしないように食べ過ぎたり、飲みすぎたりする人もいる。これと首都高の現行の料金体系(均一料金)は同じで、少しでも長い距離を走ろうとする利用者がいる」。そして「距離別料金になると渋滞がなくなり、環境改善にもつながる」とメリットを強調した。

 首都高速道路は新料金になると、19キロ以上を利用する46%の人は値上げ、10キロ以上19キロ未満の32%は現行と変わらず、10キロ以下の22%は値下げになると試算した。新料金の導入を予定する2008年度の上期は均一料金で、1日平均101万台として収入は1352億円。同年度の下期に新料金となっても、収入は変わらないと見込んでいる。

 新料金導入の理由として「『首都高速道路が儲けるために行うのでは?』という声もあるが、決してそんなことはない」と否定した。

 無記名式の電子マネー首都高Xは、カード代600円程度に通信器のデポジット代として数千円の利用者負担を予定している。ETCの導入費用は約1万円(補助なしの場合)なので、首都高を年に数回しか利用しない人にとっては、首都高Xの方が安い。

 通信器の取り付けはシガーソケットに差し込むだけで、ETCのようなセットアップは不要だ。ただ首都高を通行する前に、コンビニや料金所でチャージの必要があるため、煩わしさがある。

 「ETCに比べ首都高Xを取り付けるのは簡単。しかし後から、やや手間がかかる」と一長一短を指摘。さらに「ETCは割引があるが、首都高Xは(料金所の)人件費がかかるため、割引はない」と説明した。

yd_x.jpg

首都高の料金が高く感じるのは「渋滞するから」?

 パネルディスカッションでは首都高と車の関係について意見交換した。

 東京大学大学院の家田仁教授は「これまで新幹線の進化はすごいものがあった。車も燃費や性能が進化した。しかし首都高は、ようやくネットワークができつつある。今は生まれ変わろうとしているタイミングではないか」と話した。

 モータージャーナリストの岩貞るみこ氏は「渋滞するから首都高の料金は高いと感じる。そのためには事故をなくすことが大事。事故をすることで、渋滞が起きるケースが多い。また1件の事故が起きると、約3トンのCO2が余分に排出されるというデータがある。道路を作り直すことは難しいので、ITS※を活用して、車の流れをコントロールしてほしい」と訴えた。

※ITS:人と道路と車を情報ネットワークで結び、交通事故や渋滞などの解決を図る交通システム。

 距離別の新料金のほかに、新しい料金体系の提案があった。交通ジャーナリストの清水草一氏は「渋滞している道路の料金を高くし、なるべく利用者に走らせないようにしたほうが良い。混んでいる首都高は料金を払うのがバカバカしく、利用価値がない。(朝などの)ピーク時の割引率を、さらに引き下げるのはどうか」という意見があった。

yd_paneru1.jpg 首都圏の高速道路網の完成イメージ

首都高は「急がないと遅れてしまう」

 首都高に対し、他社と提携を促す意見も出た。家田氏は「東京23区に流入する70%の人は、電車を利用している。首都高速道路はJRや地下鉄などと提携し、新たな施策を打って出る必要があるのではないか」と提案した。

 首都高での渋滞が多い理由として、1点集中型のネットワークが挙げられる。都心環状線で渋滞を引き起こすことが多いため、首都高速道路は現在、中央環状線を建設中だ。これが完成すると、首都高の渋滞は約2割減少するという。

 渡口氏は「かつて高速道路は『急がなくても早い道』という標語があった。しかし首都高では『急がないと遅れてしまう』となっている。中央環状線が完成すれば、ゆっくり走っても目的地に着くと思う。CO2削減のためにも、いい道路で、地球と地域に優しい道路を作っていきたい」と意欲を示した。

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