第2回 ヤバい頭痛に気をつけろ!──頭痛の種類を把握するドクトル・ピノコのプチ元気の薬

» 2008年04月24日 08時50分 公開
[ドクトル・ピノコ(企画:ソフトバンク クリエイティブ),ITmedia]

 頭が痛いことが多い。物価は上がるし、サブプライム問題だって気がかりだし、北京オリンピックがどうなるのかも見えないし、夏に向けてダイエットもしなきゃいけないし……。こんな頭が痛いことだらけの時代だからこそ、「頭痛」について知っておこうじゃないか! 強引な出足ですいません。

 さて、その頭痛。一日中パソコンに向かっていると、首や肩が凝ってだんだん頭が痛くなってくるなんてことはありませんか? パソコンとは無縁な仕事に見られがちの私のような臨床医でも、最近は電子カルテ化が進んだためにパソコンへ向き合って仕事をする時間が一気に増えています。パソコンってほんとに目が疲れるのよね。目をしょぼしょぼさせながら電子カルテを打ち込んでいると、だんだん具合が悪くなってきて、自分が医者なのか患者なのかもう分からなくなってくるし。

 それにしても、頭痛って奥が深いというか、幅広いというか、変わった症状です。だって、頭の痛みにもいろいろな種類があるでしょ。とても身近なものなのに、病院に行ってもどの科の医者にかかればいいのかも分かりにくいという話もよく聞きます。一般的にはまず内科ってことが多いけど(しかも内科もさらにいろいろ分かれているし)、脳梗塞(こうそく)や脳出血なら脳外科や神経内科だし、メンタル的なものから来ていれば精神科や心療内科だし……。ああ、悩ましい。

ひと口に「頭痛」と言っても──

 ひと口に「頭痛」と言っても、その性状や内容はさまざま。痛みなどの種類によって、それを引き起こしている原因も異なるのです。でも、脳出血による頭の痛みと、肩凝りからもたらされた頭の痛み、どちらも患者からすれば「頭が痛い=頭痛」という同じ言葉のもとで解釈されてしまう。そして、その痛みはもう救急車を呼ぶべき事態になっているのか、家で寝ていればよい程度のことなのか、素早く判断することは意外と難しいものです。医者でも迷うことがしばしばですから、患者本人が正確に判断することは極めて難しいはず。

 まず頭痛の中で一番怖いのは、言うまでもなく「脳からくる痛み」、つまり脳卒中によるものでしょう(厳密に言えば脳自体には痛みを感じる機能はないんだけど、その周りの血管などに痛みのセンサーがあるんです)。現に「最近どうも頭痛がするから脳卒中じゃないかと心配なので、ぜひともCTスキャンで見てほしい」という患者さんが多く来ます。でも、意外なことに、頭痛のない脳卒中はとても多いんですよ(ちなみに脳卒中の中に脳梗塞と脳出血が含まれます)。だから「痛くないから大丈夫」というのは実は大きな誤解です。現に脳梗塞の多くは痛みを伴わないんですもの。

 反対に脳出血の場合は痛みを伴うことが多いのですが、中でも最も痛みが激しいものとして有名なものに「くも膜下出血」という病気があります。この頭痛を私は経験したことがないのですが、とてつもなく強烈な痛みだと聞きます。よく、「後ろから突然鈍器で殴られたような頭痛」といった表現をされることが多いのですが、これに嘔吐(おうと)などの症状が伴えばなおさら危険な頭痛の可能性が高くなり、もう救急車を呼ばねばならない状況なのです。

頭の一部が拍動を伴うように痛む──

 次に特徴のある頭痛として、少し専門的な言い方ですが、「片頭痛」「群発性頭痛」というものがあります。片頭痛は特徴的な前駆症状、つまり頭痛の前に特有の症状(片頭痛では目の前がピカピカするなど)があり、発作は数時間程度、長いものだと1日中続きます。頭の片側、または両側が拍動を伴うように痛むというのも特徴的です。

 群発性頭痛は男性に多く、こちらも特有の前駆症状(目が充血して涙が出るなど)があります。毎日決まった時間帯に激しい頭痛発作が起き、いつも決まった片側の頭が痛むのが特徴です。どちらの頭痛もきちんと診断さえつけば薬で対処できるのですが、診察した医者がこの病気を知らなければ当然診断もできないので、むやみに鎮痛剤などを出されても全然治らない、という困った状況になるわけですね。

拍動を伴うように痛むが──

 そして、拍動を伴うように痛むは「筋緊張性頭痛」というものです。頭痛の大半はこれだと言っても過言ではありません。これは、ずっとパソコンに向かって仕事をしている皆さんにもよく見られる頭痛で、精神的なストレスや過労からくることもあります。頭の筋肉がずっと緊張することによって起こり、肩凝りや吐き気、めまいなどを伴うこともあります。痛みの種類としては「頭を締め付けられるような痛み」「ヘルメットをかぶせられているような感じ」と表現されることが多く、しかも急激に発生するのではなくてなんとなくダラダラと痛みが続くのです。くも膜下出血の頭痛とは対照的ですよね。

 筋緊張性頭痛の治療としては、筋肉の凝りを和らげる飲み薬もありますが、まずはずーっとパソコンに向かっていないでたまに体を動かすとか、たまに窓の外の景色に目をやるとか、仕事の合間の軽いリフレッシュを心がけるのが一番です。

 というように、頭痛といっても実にさまざまで奥深いんですね。ある程度のことは症状の特徴から分かるんですが、もちろん例外もあるので一概には言えません。だから、慢性的に頭痛に悩まされていて、1つの病院にかかってもなかなか症状が良くならない人は、思い切って違う病院で意見を聞いてみるのもいいと思いますよ。常に頭をスッキリさせて能率よく仕事に打ち込みたいですね。

今回のポイント

  • 突然の激しい頭痛ならためらわず病院へ! 吐き気を伴うならなおさらです。
  • きちんと診断されれば薬で治療できる頭痛もあります。特徴的な症状に注意!
  • パソコン世代で最も多いのは「筋緊張性頭痛」。リフレッシュが大切です。

著者 ドクトル・ピノコ

女医。医大生時代には体育会に属しつつ、某社キャンペンガールや大手塾講師など数々のバイトもこなし、現在、酒と体力だけには自信アリの超体育会系の外科医として某病院にて働く。趣味は、酒、男、足裏リフレクソロジー。現在、「週刊ビジスタニュース」月イチでコラムを連載中。ぼちぼち書き仕事も募集してます。


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