――おふたりのプロフィールを簡単にお聞きしたいのですが
加藤 新聞社の系列の出版社で、PC誌や経営情報誌の記者を10年やった後、グロービスに転職しました。こういう、知恵や人の溜まっている会社が“メディア化”したら面白いんじゃないかなー、と思っていました。年齢は吉岡さんと同じなんですよね、30歳代の半ばです。
吉岡 はい。私はソフトバンクに入社して、「DOS/V magazine」というPC誌に6年くらいいました。PCやデジカメ、プリンタなど、PC誌で扱うような話題は一通り担当していたんですが、これからはWebメディアをやってみたいなと考えて、グループ内で転職し、アイティメディアにやってきました。アイティメディアに来てからは今のITmedia +D Mobileで携帯電話の話題を担当する記者になりました。編集者から記者になったパターンですね。
――社会人歴が、不景気の時代にバッチリ重なっていますよね
加藤 そうですね。どんどん媒体が休刊になって……。でも、恥ずかしながら当時は媒体の収益性にまで、きちんと意識が及んでいなかったので、ただただ取材に出られるのが嬉しいというか、毎日が“社会科見学”という感じで、あっという間でした。
吉岡 入社したのがPC雑誌の絶頂期より、ちょっと後だったんです。雑誌がだんだん売れなくなって、読者がWebに流れていくのを肌で感じながら、雑誌を作っていました。「PC雑誌はどうしたら復活できるだろう?」と考えていたけれど、その答えが出せないうちに、Webメディアに移ったという思いはあります。
もともと紙媒体で仕事をしたくて編集者になったわけだし、紙(雑誌)のいいところは知っている。でも、読者が紙からWebに流れていくのを見ていたから、紙に比べてWebは自由でいいな、という思いもありました。
加藤 そうですね。雑誌からWebに流れる、つまり、情報が無料になる、それってどういうことだろう、などと、メディア特性に意識をはせていたことが、今に生きている感じはあります。
吉岡 今は「Webならではだ」と思って、いろんなことを試せるのが楽しいですね。
加藤 ポジティブですね! 私は紙媒体に未練もありますよ。紙、大好き(笑)
吉岡 私も紙は大好きですよ〜(笑)。でも正直に言うと、紙の編集者をしていたころは「タダで読めるんだもん、そりゃWebは楽だよなあ」って、うらやましく思っていました。でも、自分がWeb媒体をやるようになったら、そんな甘いもんでもないってことが分かりましたね。
加藤 同感です。良いものを作れば必ず読まれる、というわけじゃないですものね。検索エンジンの性質とか、いろいろなもので記事の価値が変わる。当たり前ですが、読者に無料で提供するからには、どこかで稼がなきゃいけないわけですし。
吉岡 そうですね。広告モデルのフリー媒体って、ビジネスモデルがまだまだ確立していないんだなというのを身に染みて実感しています。良いものを作るのは当たり前。どうやってそれに気付いてもらうか? 読んでもらうか? そこが一番難しい。今は有料無料に関係なく、読者の“目玉”の奪い合いだと思っています。ライバルは雑誌やフリーペーパーだけじゃない。携帯電話も、車内の中吊り広告も、みんなライバル。iPod聞きながら寝てる人だと、居眠りすらライバルですよ(笑)
加藤 あははは。でも、今回の企画みたいに共存共栄できるポイントもありますしね。これは、当社がメディア専業ではないからかもしれませんが。
吉岡 いえ、本質的に「一緒にやっていく」がやりやすいんですよ、Web媒体は。先ほど出たように書籍化という展開もあるし、例えば携帯コンテンツへの展開もあり得ますし。
加藤 そこが面白いところですよね。ライバルだからと、ただ切って捨てるのではなく、今日の友かも、と考えてみることができますよね。
吉岡 そうそう。例えば弊社の場合だと、ITmediaの記事が、紙の産経新聞(編注:「Sankei Express」)に載っていたりします。
加藤 それはすごいですね。あ、でも、GLOBIS.JPも記事がきっかけで執筆者に取材依頼があったり、本を書いてくれと言われたりしますから、そういう感覚は少しですが、分かります。どこから何がつながるか分からない感じ。だから、とにかく小さかろうが何だろうが舞台に立ち続けることが大切ですね。ただ、Webというのは誰もが発信できるメディアだけに、「プロの仕事」って何?ってことを、いつも考えさせられたりはします。
吉岡 それは確かにあります。ともあれ、情報発信し続ける場として、Webはとても面白いです。ちょっと余談になりますが、最近とみに「テレビや新聞 vs インターネット」みたいな言われ方をしますけれど、インターネットはまだまだ形が定まってないから、何と組んでどう化けるか分からない。敵だって決めつけないでほしいな、と思いますね。
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