著者プロフィール:郷 好文
マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・運営、海外駐在を経て、1999年よりビジネスブレイン太田昭和のマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。現在、マーケティング・コンサルタントとしてコンサルティング本部に所属。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」
都心を歩くと自転車メッセンジャーを毎日見かける。ハンドルも車体もユニークな軽い自転車を上手に乗りこなす彼らは、サイクルパンツにヘルメット姿。肩から無線機とA3の書類が折らずに入る大きなバッグをタスキ掛けで背負って走る。
バッグに収まるのは、荷主が当日中に届けたい3キログラム以下の荷物だ。彼らはもちろん“運送業者”だが、生き生きとした表情や交差点での早いダッシュから、「オレは単なる運び屋じゃないぜ」「走るのが仕事なんだ」という気概を感じる。でも雨が降り、風が吹きすさぶ天気では悲壮感も感じてしまう。
まさにその天候、“under the weather”という名でメッセンジャーに絶大な人気を誇り、おしゃれなデザインが一般のサイクリストにもウケているバッグがある。名は“under the weather”。その意味は「具合が悪い」。“I was feelin' under the weather last week”(先週、体調悪かったんだ)、さらに“金欠”という意味もあるハンドメイドの作り手、カナダ・トロントのAnais Fritzlan(アナイス・フリッツラン)さんにインタビューした。
――なぜメッセンジャーバッグの事業を始めたのですか?
アナイス 初めてメッセンジャーとして働いたのは2000年。トロントで数週間、ニューヨークでは数カ月走って、アムステルダムで半年かしら。前夫(オランダ人)がメッセンジャーをしていたの。その頃からたくさん縫い物をしていて、彼が『こんなメッセンジャーバッグがあればいいのに』と言い出して、私たちの経験を込めて、彼や自分のため作ったり、友人のために縫ったのが始まりね。
――メッセンジャーの経験がバッグに生かされているわけですね。
アナイス メッセンジャーとして働くのは楽しかったわ。とっても大切な仕事よ。でも私はバッグを作ることを選んだの。作ることが楽しいから。(メッセンジャーになった2000年頃から)バッグを作ってはCMWC(メッセンジャー世界選手権)やECMC(同欧州選手権)で売りました。2001年の秋トロントに帰り、グラフィックデザインの学校に行き、2002年半ばから“under the weather”の事業を始めました。
その特徴は1つとして同じものがないことだ。デザインにウィットがあり、色のコンビネーションが絶妙。外側だけでなく内側にも配色の妙がある。
――色や素材の組み合わせはどうやるんですか?
アナイス ネットからの注文をベースにグラフィックを起こして、身の回りのモノから発想したり、手持ちの材料を組み合わせます。自然、花、木々のデザインも好きですし、都市風景も科学技術柄も好き。でもアートっぽいデザインが一番好きかしら。
アナイスさんは幼少の頃から、母から縫製を教わり服や小物を縫ったり、絵を描くのが好きだった。デザインと印刷技術を学び、グラフィックのコースも通ったが、ほぼ独学でデザインの技術を磨いたという。
――バッグの機能の特徴は、どんなところにありますか?
アナイス まずは耐久性。縫製ではいつも心掛けています。最近素材をPVC(ポリ塩化ビニール)からTPU(ポリウレタンエラストマ=軽量で耐久性・耐摩耗性に優れる高機能材料)に変えたのも、環境に優しいという理由だけじゃなくて、TPUの強度が高いからでもあるの。
under the weatherの日本代理店を営むサイクルショップ「Depot(ディーポ)」の湊誠也さんは、「メッセンジャーバッグはその土地ごとに、ご当地ブランドがある」と話す。その地で多い書類や物品、天候などによって仕様が決まるのだ。
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