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» 2008年06月24日 09時27分 公開

エコで賢いハイテクカー「ゴルフ TSI トレンドライン」に乗ってみた神尾寿の時事日想・特別編(2/3 ページ)

[神尾寿,Business Media 誠]

 フォルクスワーゲンが「DSG」と名付けるセミオートマティックトランスミッションは、基本構造はマニュアルトランスミッション(MT)を踏襲している。しかし、クラッチの操作はコンピュータ制御のロボット機構が行うため、足下にクラッチペダルはない。AT限定免許でも運転できるMTだ。さらにDSGでは、クラッチ版を2枚搭載し、互い違いのギアを組み合わせることで、オートマティックトランスミッション(AT)以上のスムーズさで自動変速を行う(マニュアル操作も可能)。それでいてATよりもエネルギー伝達ロスが少ない。またコンピュータが適切なギアを選ぶので、「一般的なドライバーの運転ならば、MTよりもDSGの方が低燃費になる」(説明員)という。

 TSIでは、このDSGの新型を7速化し、1速は従来より約20%ローギアードにし、逆に7速は約8%ハイギアードに設定した。これにより1速を使う発進加速時はエンジンの出力が低くてもスムーズな走り出しになり、7速を使う巡航時はエンジン回転数を抑えた低燃費走行になっている。さらに新型DSGはオイル冷却不要の乾式とすることで、従来の6速DSGに比べて23キログラムも減量。システム全体を軽量・コンパクト化することで車重を軽くし、こちらも燃費性能の向上に貢献している。

ゴルフ TSI トレンドラインが搭載するエンジンは、国内初登場の1.4リッターTSIシングルチャージャーエンジン

 パワートレイン(駆動部)以外の部分にも少し目を向けてみよう。

 今回発表されたTSIは、ゴルフの普及価格帯を支えるボトムグレードだが、欧州車の常で安全装備はとても充実している。

 まず、ハイテク安全装備の代表である「ESP (エレクトロニック・スタビリゼーション・プログラム): 横滑り防止装置」を標準搭載している。これは雨天や積雪などにクルマがスリップしそうになると、コンピュータが自動的にすべてのタイヤの動きをコントロールし、横滑りを防止するというハイテク機構だ。横滑りが起因する事故の抑制効果は30〜35%以上であり、欧州での普及率はドイツの約90%を筆頭にとても高い。フォルクスワーゲンが下位グレードのTSIにまでESPを標準装備していることは、同社の安全意識の高さの表れとして高く評価できるだろう。

 さらに衝突時のダメージ軽減で重要なエアバッグは、フロント、サイド、リアサイド、カーテンの合計8個を装備。側面や後席のエアバッグまできちんと装備することで、側面衝突や後席同乗者の安全性にまで配慮されている。ゴルフはファミリーカーとして使われるケースが多いので、「すべての席で安全」という作りは大切だろう。

フォルクスワーゲン初の7速DSG。TSIエンジンとの組み合わせで、低燃費を実現した

クルマの本質にコストをかける、ドイツ車気質

 さて、筆者とD記者の試乗は、会場であった海浜幕張から高速道路と一般道で千葉県を軽く周遊するコース。その行程の中で、この新たなゴルフは終始安定した走りを見せた。一般道のストップ&ゴーはスムーズであり、高速道路での加速や巡航でもしっかりと流れをリードする。これがコンパクトカー並みの排気量しかないクルマだとは、まったく思えない。

 さらにTSIエンジンとDSGはとても複雑な機構ながら、振動やメカニカルノイズとは無縁だ。EVのように静音なわけではないが、エンジン音は終始穏やか。DSGによる変速はとてもスムーズで、何も知らなければ、“ダイレクト感のある優秀なAT”としか思えないだろう。ハイテクを駆使したエコカーで、しかも普及価格帯のボトムグレードという制限がありながら、「精緻な機械」を感じさせる乗り味を実現しているのは素晴らしい。

ゴルフ TSI トレンドラインの車内(左)、スムーズな変速をする7速DSG(右)

 エンジンや変速機といったパワートレイン(駆動系)や安全装備といった「クルマの本質」の部分にきっちりとコストをかけている姿勢に好感が持てる。

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