ドコモ、パケット定額料金の2段階制を導入――携帯ビジネスへの影響は?神尾寿の時事日想(2/2 ページ)

» 2008年08月27日 12時24分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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2段階定額の拡大で好影響を受けるのは?

 最大手のドコモが2段階定額を導入したことで、携帯電話ビジネスの世界にはどのような影響があるのだろうか。

 先述のとおり、2段階定額は“定額制の敷居を下げる”ことで、ミドルユーザーやライトユーザーを定額制の傘に取り込む。彼らはこれまで、日常的かつ積極的にコンテンツやデータ通信サービスを使っていなかった層である。

 その一部のユーザーは、2段階定額制への加入が1つのきっかけになり、メールやコンテンツの利用が活性化。データ通信サービスのアクティブユーザーになるだろう。2段階定額制の上限金額まで使うことになり、キャリアのARPU(ユーザー1人あたりの収益平均のこと、キーワード)を押し上げることになる。実際、auの2段階定額制は「月額最低料金で定額制加入者を増やし、その後、コンテンツやサービスの魅力で(2段階定額制の)上限金額までデータARPUを引き上げる」ことに成功している。

 一方で、2段階定額の“利用が少ない月は支払金額が安くなる”という特徴は、日常的に使わないパケット通信を使わないコンテンツやサービスにとっても追い風だ。

 例えば、その好例となるのが、おサイフケータイの各種サービスである。おサイフケータイの利用では、最初にICアプリのダウンロードをしなければならないが、その後の利用でパケット通信を使うのは、電子マネーのチャージ(入金)やポイント確認といった程度だ。こういった利用シーンでは定額制のニーズはあるものの、それほど大量のパケット通信を使うわけではないので、2段階定額制とは相性がよい。

 過去のおサイフケータイ関連の取材を鑑みても、ドコモとauの母数の比率に反して、おサイフケータイの利用率は両者でほぼ同じ。実質的には“auユーザーのおサイフケータイのアクティブ率が高い”と感じるケースが非常に多かった。この背景にある要因の1つが、auが先行した2段階定額制の影響だと筆者は見ている。また、この傾向は女性層において特に顕著だ。

 今回、ドコモがパケット定額制の2段階化にあわせて、積極的にミドルユーザーやライトユーザー層に改めておサイフケータイの利用促進を行えば、利用率が低いまま足踏みしているおサイフケータイにとって「追い風」になるのではないだろうか。

 他にも、2段階定額制の広がりは、携帯電話を2台使い分ける「2台持ち市場」や、「PPV型のコンテンツ/サービス市場の拡大」に貢献する。最大手のドコモが2段階定額制を導入することによって、携帯電話のデータ通信を活用するサービスやビジネスも、今までより裾野が広くなりそうである。

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