第3話 師匠、登場Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(2/4 ページ)

» 2008年09月10日 12時00分 公開
[眞木和俊,Business Media 誠]

小栗 購買部、小栗です。志願してこのプロジェクトに入ったわけではありませんが、結果が出る程度にはやらせてもらいます。それと中村リーダーには、結構注文つけさせてもらうと思うんで、よろしく。

 誠の顔も見ないでこう言い放つと、再び小栗順はしかめ面で腕組みをした。

 ええと、お手柔らかにお願いします。では浜崎さん。

浜崎 広報部市場調査室の浜崎しほと申します。私はこのプロジェクトにすごく期待して参加しました。少し先のことを考えると、今すぐ当社の柱になる新商品を強化しないとマズイんじゃないかって、いつも思っていましたから。いくらウチの定番商品が強いからといって、これだけ原材料が高騰したら収益が厳しいですしね。それから小栗さん、一緒のチームなんだから、ケンカ売らないでくださいね。以上。

 (すごい、はっきりモノを言う人なんだなあ、浜崎さんって……。頭も切れそうだし、尊敬しちゃうよ。)

坂口 じゃあ最後になりますけど、飲料開発部の坂口です。社長の前なのであえていいますが、ウチのイソフラボンは他社がかなわないほど高濃縮ですから、ドリンクでも全く問題ありません。すでに試作品もいくつかあるので、さっそく試してもらえるといいと思います。

仲居 だからって、確実に売れるとは限んないだろ? もし坂口のいうとおりなら、このプロジェクト自体不要ってことになるし。

東山 そうだ。だからこそ、このプロジェクトでそれをしっかり検証してもらいたいというわけだ。この忙しい中、みんなの時間を割いて参加してもらうのだから、必ず成果を出してくれるよう、私からもお願いするよ。さあ、中村リーダー、メンバー紹介はこのぐらいにして、ゲストの紹介に移ってはどうかな。

 はい、ええと、そうですね。皆さんありがとうございました。えー、次は小石川社長から、本プロジェクトチームへの期待を伺いたいと思います。では社長、よろしくお願いします。

 ゆっくりと小石川が立ち上がり、ひとわたりメンバーの顔を眺めると、よく通る低い声で話し始めた。

小石川 皆さん、ご苦労様。最初に東山君が説明したように、このプロジェクトは私の希望でぜひ若手メンバーに任せたいと考えました。なぜなら、皆さん自身が作ったものが将来の皆さんを支えていく柱になるからです。ご承知のとおり、アイティ食品グループは今年で創業60周年を迎えるわけですが、いつまでも過去の資産だけを守っていたのでは現状維持もままなりません。先ほど浜崎さんがいっておられたとおり、とりまく環境が大変厳しい中、新しい力がなければ前に進めなくなってしまうかもしれません。社長の私には大変な危機感があります。皆さんには、それを分かってもらった上で、このプロジェクトに取り組んでいただきたいのです。もちろん皆さんの成長ぶりも楽しみですが、なによりも成果が出なくては始まりません。

 小石川はここまで話すと、再びメンバーの顔をぐるりと見渡した。

小石川 実は、今回のプロジェクト活動では、外部の強力な助っ人を頼みました。ここにおられる星野仙八先生です。星野先生は、経営コンサルタントとしていろんな会社の業務改革を推進しておられ、今もグループ本社の改革を支援してもらっています。今日も、アドバイスだけでも欲しいと私から無理にお願いしてここにきていただきました。せっかくですから、今日のキックオフを見ていただいたご意見を伺うことにしましょう。星野先生、よろしいですか?

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