第9話 コンサルタントの掟(おきて)Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(2/3 ページ)

» 2008年10月22日 20時00分 公開
[Business Media 誠]

星野 2つ目は「客観的立場を保つ」ということです。物事を判断する際には、どちらが好きとか嫌いではなく、あくまでも事実やデータの裏付けをもって行います。たとえ自分たちの依頼主にとって不利な結果だったとしても、淡々とその結果を伝えなくてはなりません。

 話の途中で依頼主が怒り出したとしても、ですか?

星野 もちろん相手を怒らせたくはありませんが、本当に伝えるべきことであれば、たとえ怒鳴られたとしても、正しくお伝えしなくてはならないでしょうね。そのためにも私たち自身は感情面のコントロールをきちんと行うことが必要なのです。

 それって、すごく大変そう……。

星野 そして3つ目は「アウトプットに責任を持つ」ことです。当然ながら、データが不足したからといって、都合よくでっちあげたり、ねつ造したりするのはもってのほかです。また自分たちの出した結果が、最終的に会社にとってどのような影響を与えたのかをトレースできるようにすることも重要になります。

 う〜ん、掟というだけあって、厳しい内容ですね。僕たちがこのまま調査を進めても平気なのか、ちょっと不安になってきました。

星野 そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。まして今回の予備調査は社内向けなんですから、この話は心構えとして聞いておいていただければ結構です。でもこうした活動には3つの掟があることは覚えておいて下さい。

 分かりました。でも、心して調査にとりかかることにします。

 星野との電話を切ったあとも、誠はしばらく掟のことを考えていた。

 とにかく「今回の調査で得た情報の扱いにはくれぐれも注意しろ」ってことなんだな。チームメンバーにもそのことをよく伝えておかなくちゃいけないな。でも、それ以外に何か師匠に聞くことがあったはずなんだけど、あれ、何だっけ……。

 若干の不安を残しながらも、誠たちプロジェクトチームは、翌日から手分けをして予備調査を開始した。各メンバーがそれぞれパネルセットを持って社内の対象者に意見を聞いて回り、好きな順に1番から8番まで順位を付けてもらった。回答する社員も積極的に協力してくれたおかげで、計画通りの日程で100人分のデータを集めることができ、誠はホッと胸をなでおろした。

 パネルの順位の1番に8点、2番は7点というふうに8番の1点まで担当した回答分を表計算ソフトに入力して……と。それからメールにデータを添付して、山口さんに送って100人分を集計してもらうんだったよな。

 その日の夕方、山口から100人全員の集計データが添付された返信メールが届いた。

山口メール 前回のチーム討議で決めたとおり、私のほうで男女50人ずつに分けた集計結果と全100人の集計結果を作成しました(図)。そこでリーダーにご質問ですが、この表の結果から、一番いい条件の組み合わせは点数の一番高い「商品案(4)」と決まるのでしょうか?

予備調査の結果

 そうだった!師匠に聞かなくちゃいけなかったのは、この先の分析の進め方だったんだ。確か、分析には統計処理ソフトが必要だって言ってたな。ウチの社内のどこかにそんなソフトがあるのかな?

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