どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――未来編近距離交通特集(4/5 ページ)

» 2008年11月14日 16時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

【27】東海道貨物支線の旅客化等及び川崎アプローチ線(仮称)の新設

 東海道貨物支線は、田町駅付近から、港南4丁目地区、品川埠頭、大井埠頭の東京貨物ターミナル、昭和島、羽田空港西、京急小島新田駅付近を経由して、JR南武線またはJR鶴見線に接続する路線だ。JR南武線とは京急八丁畷駅付近で分岐して東海道本線に併走する形で合流する。この路線を旅客化する計画である。神奈川県、横浜市、川崎市が「京浜臨海部再編整備協議会」を結成して関係省庁に要望活動を行っていた。

東京貨物ターミナル(東京貨物開発Webサイトより)

 東海道貨物支線の建設理由は、東海道本線の貨物列車を汐留駅から臨海部経由で鶴見駅付近まで迂回(うかい)させるためだった。その背景には東海道本線の旅客列車の増加がある。その後、貨物列車はコンテナ輸送への転換が行われ、コンテナ設備専用の東京貨物ターミナルが稼働すると、汐留駅は廃止。まず汐留駅−浜松町駅が廃止され、次に浜松町−品川も新幹線品川新駅建設を理由に廃止されて現在の形になっている。

 東海道貨物支線の旅客化要望の発端は1984年に設置された「県・横浜・川崎大都市産業問題研究協議会」である。この会は「横浜、川崎地域における工業をめぐる諸課題に対応しながら、大都市産業の問題を検討する」という目的で結成された。さらに同会の趣旨について具体案を作成して活動するため、1996年に神奈川県、横浜市、川崎市の首長が直轄する「京浜臨海部再編整備協議会」に改組される。東海道貨物支線の旅客化は、同会の計画の基軸となっている。18号答申もこの会の活動をくみ入れた提言をしたと言えよう。

 京浜臨海部再編整備協議会は発足後、毎年必ず運輸大臣および国土交通大臣に要望を行っていた。一方、東海道貨物支線に臨時の旅客列車を走らせ、希望する市民に体験乗車の機会を作るなど啓蒙活動も行っていた。しかし同会のWebサイトを見ると、2005年を最後に東海道貨物支線に対する要望活動は行われていないようだ。しかし京浜臨海部再編整備協議会の活動は継続しており、今後、新たな形で実現に向けた動きが出るかもしれない。

赤線は東海道貨物支線

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