どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――未来編近距離交通特集(2/5 ページ)

» 2008年11月14日 16時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

【13】 東京9号線の複々線化及び延伸(2)

 小田急本線の複々線化については連載第2回で紹介した。18号答申ではこのほかに、小田急多摩線を唐木田駅から先へ延ばし、JR横浜線・JR相模線と接続させる計画が「今後整備について検討すべき路線」とされた。現在、相模原市と町田市によって実現に向けた取り組みが活性化している。

 相模原地域は相模原、相模大野、橋本、上溝、淵野辺など中堅都市が散在している。鉄道は南北方向のJR横浜線、JR相模線が主軸であり、都心方向は北部の橋本駅で京王電鉄、南部の相模大野駅で小田急電鉄が通っている。JR横浜線は全線複線となっており快速運転も実施されている。しかしJR相模線は全線単線となっており、上溝、原当麻地区は他地区に比べて不便な地域であった。加えて、相模原市の中心である相模原駅の東西方向交通網を整備し、隣接する町田市との交通を強化するためにも、小田急多摩線の延伸要望は大きかった。

 18号答申を受ける形で2002年に小山・清新・大沢・上溝地区など関連自治体と商店会が小田急多摩線延伸促進協議会を設立した。この時点では誘致運動、構想の初期段階でしかなかった。

在日米軍相模原総合補給廠(神奈川県Webサイトより)

 計画が進まなかった理由は、延伸ルート上に在日米軍相模原総合補給廠(ほきゅうしょう)があるためである。相模原総合補給廠は相模原駅北側に広大な用地を持っており、相模原駅北部地域からの駅のアクセスが不便であること、駅前の一等地であることから、かねてより用地返還の要望が出されていたという。在日米軍は今後も同施設を維持していく方針だ。

 しかし、2006年に日米両政府の協議により、同所の一部用地返還が決まった。これにより相模原駅北部への道路と鉄道の用地が確保できることから、相模原市が主体となった建設誘致活動が活発化している。小田急多摩線延伸促進協議会は2007年までに22団体が加盟する規模になった。相模原市は2010年に向けた政令指定都市指定の取り組みの中で、小田急多摩線の延伸とJR相模線の複線化を交通網整備の重点課題としているようだ。相模原市は小田急多摩線延伸部が通過する町田市と連携して取り組んでいく方針である。相模原市は2006年9月に500万円で小田急設計コンサルタントに延伸の効果や運営形態などについての調査を委託している。また、2006年11月には町田市と「小田急多摩線延伸検討会」を設置。小田急電鉄を交えた協議を開始した。

 小田急多摩線では川崎市営地下鉄の乗り入れ要望もある。しかし、相模原地区から川崎駅へは横浜線経由もあり、多摩線経由ではメリットが小さい。川崎市と相模原市の間に挟まれる小田急としては微妙なかじ取りが求められている。小田急電鉄は自社負担による延伸には難色を示しているという。自治体要望の温度が高い路線であるため、建設するのであれば、線路設備は自治体が建設保有、運行のみ小田急が担当する上下分離式で応じたい意向だという。

赤字が計画路線(予想)、水色は相模原総合補給廠用地

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