このように白物家電についてはユーロラベルという明確な基準があるため商品の“エコ度”は評価しやすいが、世の中にはチェックし難い製品やサービスが多い。例えば生鮮食料品の場合。まず、残留農薬量が基準値以下であることと、禁止薬物が検出されないことが最低条件。エコ度は残留農薬量がどれだけ少ないかで決まり、全く検出されないのが最良だろう。
基本的にすべての製品やサービスが監督官庁の検査を受けることになるが、役所だけで現代の多様化した製品やサービスをすべてチェックすることは不可能である。
抜き取り検査が基本であり、役所の常として対応はどうしても緩慢になりがちだ。役所は消費者の権利だけでなく、企業の権利も重視しなければならないから事実公表にどれほど積極的かも不透明。また、基準値の検査は行っても、エコ度という“基準以上の付加価値”まで評価するのは役所の業務に馴染みにくい。
そこで重要になるのが企業からも役所からも独立した民間のチェックシステムだ。
ドイツには“テスト誌”というカテゴリーの雑誌があり、製品やサービスの品質・安全性・使用説明書の内容・価格などを中立の立場で評価し、その情報を消費者に提供している。30年ほど前に商品テスト財団がテスト誌を発行したのが始まりで、現在、エコに関しては「エコテスト誌」(月刊約6万部)が最も信頼されている。エコテスト誌は平行してWebサイトも運営しており、テスト結果を有料で閲覧することができる。
エコテスト誌は毎号10種ほどの商品をテストする。取り上げる商品は日常生活に密着したものが優先され、例えば歯磨き粉やシャンプーは消費者の関心が高く、新製品が頻繁に発売されるので扱われる頻度も高い。
目次 | テスト商品 |
---|---|
食べ物&飲み物 | 梨 |
健康&フィットネス | 勃起促進剤 |
子供&家族 | ベビーミルク |
美容&ファッション | 足のマッサージクリーム、シャワージェル、シャンプー |
建築&暮らし | バスルーム用の目地充填材 |
余暇&テクニック | ジョギングパンツ |
エコマネー | 労災保険 |
商品テストは中立性を確保するため、独立した検査機関に依頼される。こうした商品テストは生産者の手の届かないところで行われるので、結果に対する消費者の信頼は厚い。
一方、対象となる製品やサービスを提供する側にとっても、エコテスト誌の評価は大変気になるところ。商品が高く評価されれば問題ないし、「エコテスト誌で好評価!」とCMで利用することもできる。エコテスト誌は厳しいテストと公正な評価姿勢から、消費者のみならず企業の信用も勝ちとり、エコプロダクツ評価の権威として確固たる地位を築くことに成功した。
もしエコテスト誌で最低ランクの評価を受ければ企業にとっては一大事だ。誌上には商品が実名と写真付きで紹介されるから、イメージダウンは避けられない。この点でトラブルはないのだろうか?
実のところ、エコテスト誌はこれまで500件を超える訴訟を起こされているが、裁判に負けたのは1988年の1件のみ。中立検査機関によるテスト結果を客観的に掲載するのが強みだが検査機関もミスをすることがあり、また当事者にテスト結果を事前通知していなかったことが原因で敗訴したという。現在はテスト結果を事前に通知しているが、それに対するクレームがあっても掲載内容を変えるわけではない。
ただし、エコテスト誌の目的は商品の弾劾ではなく消費者への情報提供だ。商品が低く評価された企業は品質改善に取り組むことが多いので、連絡があればその商品を再テストして結果を公表する。エコテスト誌が結果的に製品の品質改善に役立てばそれでいいのである。
エコに対する消費者の視線が厳しさを増す中、こうした情報誌の必要性は着実に高まっている。
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