歩くだけで発電可能? 携帯型発電機「nPower PEG」とは郷好文の“うふふ”マーケティング(1/2 ページ)

» 2009年02月19日 07時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター支援事業 の『くらしクリエイティブ "utte"(うって)』事業の立ち上げに参画。3つの顔、どれが前輪なのかさえ分からぬまま、三輪車でヨチヨチし始めた。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」


 If you can take one step, you can take one more.(一歩踏み出せるなら、もう一歩踏み出せる)

 これはロッククライミングの第一人者、2006年に米ヨセミテ国立公園で転落死したTodd Skinner(トッド・スキナー)氏が遺した言葉。目前の10フィートがどんなに困難な道であったとしても、それを克服できたならきっと頂上まで登りきれる。登頂不可能だとあきらめる前に、一歩を踏み出そう。踏み出せば次の一歩につながる。

 アパラチア山脈を山行していた起業家Aaron P. LeMieux(アーロン・リミュウ)さんを突き動かしたのも、おそらくそんな衝動だった。彼は山登りで一歩一歩踏み出すうちに、その運動エネルギーを回収する仕組みを作れないだろうかと考えたのだ。

アーロン・リミュウさん

nPower PEGの製品概要

 リミュウさんの発明した携帯型発電機「nPower PEG(Personal Energy Generator)」は、バックパックやスーツケースの中に入れて歩くだけで、歩行時の運動エネルギーを回収して内部で発電を行える無電源の発電機だ。携帯電話やiPhone、iPod、ニンテンドーDSやPSP、デジカメなど現在発売中の携帯機器の90%に対応。これらのデバイスとnPower PEGとをケーブルでつないで充電する。

nPower PEG

 風力発電は風力エネルギーを回収し、ソーラーパネルは光の放射エネルギーを回収する。それと同じようにnPower PEGは、歩行の上下動と前後動で生じる運動エネルギーを回収する。

 運動エネルギーが100ワット発生すると、nPower PEGは約2.5ワットを回収できる。サイズは長さ22センチメートル、最も太い部分で直径3.8センチメートル、重さは約250グラム。姿形はLEDの小型懐中電灯に似ている。

 すべての携帯機器ユーザーがターゲットであるばかりでなく、山行のバックパッカーやセールスパーソン、ジョガー、メッセンジャーなど、自転車乗りや軍隊、警察官やセキュリティスタッフなどにもいいだろう。

 nPower PEGは、2009年7月に米国でリミュウさんの会社Tremont Electric社が発売、価格は149ドルを予定している。先進国だけではなく、発展途上国での発電事情まで考えると、相当大きな市場が見込める。

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