2009年はキャズムを越えたい――フェリカネットワークス・芳野弘社長神尾寿の時事日想・特別編(2/2 ページ)

» 2009年03月04日 06時01分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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「かざすクーポン」は裾野の拡大の成功例

――かざす場所という点では、昨年まででずいぶんと広がりました。しかし、おサイフケータイの利用者層は、カードに比べるといまだに「30〜40代、男性」が中心で、比較的リテラシーが高い層という偏りがあります。

芳野 ええ、ですから利用者層の拡大をしていかなければならない。そうしないと、この先のキャズムは超えられません。

 その観点で見ますと、昨年、マクドナルドさんが導入した「かざすクーポン」は、とてもよい事例となりました(参照記事)。かざすクーポンは“おサイフケータイでしか利用できないサービス”であり、今まで苦戦していた女性層のニーズが掘り起こせています。特に主婦層にお使いいただけている。(おサイフケータイの)裾野の拡大の最初の成功例と言えるでしょう。

――かざすクーポンはたいへん好評なようですね。まだサービス開始していない地域でも引き合いが多く、全国展開のスケジュールが早くなったと聞いています。

芳野 ハッピーセットでの展開効果もあり、お子さんをお持ちの主婦層に受け入れられたというのが、(成功要因として)とても重要でしょう。かざすクーポンの好調で、私としても、利用者層の拡大が実現可能であるという手応えを感じました。

――あと、2008年を振り返りますと、3者間通信機能を用いた、インストール不要で簡便なおサイフケータイの利用法も広がりました。例えば、「ぐるなびタッチ」(参照記事)などはシンプルで低コストなおサイフケータイ利用法として、かなり広まったと言えます。

芳野 そうした簡易的な用途での広がりも、我々(フェリカネットワークス)では重要なものと認識しています。まず、何より「ケータイをかざす」という行動様式を根付かせなければなりませんので、アプリ導入の手間が要らず利用できるというのは、裾野の拡大で重要です。

2009年は利用者層の拡大を狙いたい

――2009年を見越して、おサイフケータイの発展にとって重要な分野や業種はどういったところでしょうか。

芳野 すでに成熟している交通ICと電子マネー以外はすべて重要なのですけれども(笑)、とくに注目になりそうなのが“クーポン”などCRM向けのツールでしょうか。特にクーポンは、低コストで導入しやすいソリューションが重要になると考えています。

――マクドナルドの成功で電子クーポンの重要性や、しっかりと活用した時の効果は認知されてきたのかな、と思います。しかしその一方で「マクドナルドほど大型投資できない」という声も聞きます。

芳野 まさに(重要なのは)そこなんです。マクドナルドほど作り込んだテーラーメイドのソリューションですと、投資額が数億となってしまう。これでは導入できる企業は限られてしまいます。ですから、もっと安く(おサイフケータイと連携する)電子クーポンシステムが登場する必要があります。

――おサイフケータイを活用した電子クーポンについては、今回のIC CARD WORLD 2009でも多くの企業が、それぞれ魅力あるプロダクトやソリューションを展示しています。これらは今回の注目の1つと言えそうですね。最後に今年の芳野さんの目標をお聞かせください。

芳野 2009年の私のミッションとしては、(アーリーアダプター以外にも利用者層を拡大して)是が非でも「キャズム越え」をしていきたい。じゃあ、利用率何パーセントになったらキャズムを越えたと言えるのかは議論の余地はあるわけですけれども、少なくとも男女問わず幅広い年代で、様々な方がおサイフケータイを使うようにしたい。すべての世代で、(おサイフケータイの)利用率が3割くらいになるようにはしたいと考えています。

――特定の世代や生活圏では利用率3割に近いセグメントもありますが、男女問わず、全世代で利用率を向上させるのは重要ですね。特に20〜40代くらいの女性層の支持が得られるかが、おサイフケータイの普及と発展にとって、とても重要になりそうです。

芳野 そうですね、女性層はとても重要です。我々としても、そこ(女性向けの訴求やソリューション展開)は重点的にやっていきたい。おサイフケータイの継続利用率はとても高いので、これまで使われていなかった方に、おサイフケータイを試していただくための施策に注力していきたいと考えています。

――どうもありがとうございました。

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