2009年はキャズムを越えたい――フェリカネットワークス・芳野弘社長神尾寿の時事日想・特別編(1/2 ページ)

» 2009年03月04日 06時01分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 3月3日、東京ビッグサイトでICカードとICタグの総合展「IC CARD WORLD 2008」が開幕した。この展示会はICカードの展示会としては最大規模であり、今年もまた例年に変わらぬ賑わいを見せている。交通ICと電子マネーから、電子クーポンやチケット、最近注目のデジタルサイネージ分野との連携まで、ICカードの活用範囲はさらに広がっており、なかでもソニーの非接触IC「FeliCa」をベースにしたプロダクトやサービスは、この分野のデファクトスタンダード(事実上の標準)になっている。

 こうしたFeliCaを用いたビジネスの中で、重要な位置を占めているのが「おサイフケータイ」だ。2004年の登場から5年目に入り、おサイフケータイの普及台数は約6000万台に届こうとしている。非接触IC内蔵の携帯電話がこれほど普及し、“ネットサービスとリアルビジネスの連携”を実現させるインフラ環境を整えた国は、日本以外にはないだろう。

 携帯向けFeliCaチップのライセンス事業とプラットフォーム運営事業を行っているのが、ソニーとNTTドコモの合弁会社であるフェリカネットワークスだ。2009年、登場からいよいよ5年目に入ったおサイフケータイは、どのような姿になるのか。IC CARD WORLDの会場から、フェリカネットワークス社長の芳野弘氏のミニインタビューをお届けする。

キーワードは“電子マネーの向こう側”

フェリカネットワークス社長の芳野弘氏

――今年の「IC CARD WORLD 2009」を見て、どのような印象を受けましたか。

芳野 IC CARD WORLD全体で見ますと、景況感が悪化した影響は多少あるのかなと思います。昨年まで出展されていた企業が参加されていなかったり、といったところが散見されました。

――確かに今年はMOPPA(モバイル決済推進協議会)をはじめ、決済系の展示が縮小していますね。これまでは電子マネー関連の展示が多かったのですが、一転して「電子マネー以外」に焦点が移った印象です。

芳野 ええ。これまでは電子マネーが(FeliCa関連ビジネスの)中心といった感じでしたけれども、今年は「電子マネーの向こう」に来たという印象です。電子クーポンやデジタルサイネージ連携などで皆さんが積極的な展示をし、知恵を働かせています。

――これまでのFeliCa関連ビジネスは、交通と決済の「インフラ投資」を重視したものだったわけですが、その上での活用やアプリケーションの質に軸足が移ってきている、と。

芳野 そうですね。アプリケーションが重要になってきています。あとは、裾野がどこまで広がるかも重要です。

――と、言いますと?

芳野 交通と電子マネーによる初期のユーザーニーズ開拓が、一巡したと見ています。ここから先、より多くのお客様におサイフケータイを使っていただくには、もっとアプリケーションを多様化させて、「おサイフケータイをかざす文化」を拡大していかなければなりません。

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