著者プロフィール:森田徹
1987年生まれ、東京大学教養学部文科二類在学中(4月から経済学部経営学科に進学予定)、聖光学院中高卒。現在、東大投資クラブAgents、自民党学生部、東京大学裏千家茶道同好会のサークルに所属している。投資・金融・経営・政治・コンピュータ/プログラミングに興味を持つ。日興アセットマネジメント主催「投信王 夏の陣」総合個人優勝、リーマン・ブラザーズ寄付講座懸賞論文最優秀賞。
本は重い。本はかさばる。本は高い――。
紙メディアの雄である“本”は、もはやスマートなメディア媒体ではないのかもしれない。
かつての出版業といえば不況知らずの内需型で、我々投資家の好きな言葉を使えば「ディフェンシブ産業」(相場の影響を受けにくい銘柄または業界)だった。出版指標年鑑2008※によると、1991年から1996年までの出版市場は年平均で3.32%の成長を遂げてきた。しかし1996年に市場規模が2兆6563億円とピークに達したあと、最新データの2007年では2兆853億円と右肩下がりで縮小している。
実に年平均マイナス2.09%(1997年〜2007年)の縮小だ。この調子だと、4月に発表される2008年統計では2兆円を切っているかもしれない。これだけ見れば“構造不況”だと言わざるを得ない惨状だ。
「本が売れていないなら……」と、本好きでかつ機械好きの筆者がまず思いつくのは、電子書籍である。だが残念ながら人類は、いまだに本という至高のメディアを「Reinvent (再発明)」できていないようである。
かつてソニーの電子ペーパー「LIBRIe」(リブリエ)やパナソニック(当時、松下電器産業)の電子書籍専用モノクロ端末「ΣBOOK」(シグマブック)など、相次ぐ電子書籍端末投入で色めき立った時期もあった。インターネットメディア総合研究所によると、電子書籍の市場規模は約335億円に達しているという(関連記事)。しかし335億円といっても、出版市場規模全体でいえば1.61%と微々たるもの。また市場を牽引しているのは、携帯電話のコミック配信というお寒い状況である。
最近話題のAmazon Kindleにしたって(関連記事)、30万台ほど売れたからと大騒ぎされる始末だ。はて、米国の国民は何億人いて、iPodは何億台売れたっけ?
というわけで、本記事では出版業界の市場構造について考えてみる。記事を書くにあたって横浜市立中央図書館まで足を運び統計数値を確認したが、“電子雑誌”と呼んでも差し支えないネットメディア(Business Media 誠など)を相当“ヨイショ”する内容になりそうだ。
だからといって「紙は死んだ。活字メディアは終わりだ」という結論に持っていく気はない。本とは“再発明”されるべきもので、その先にはきっと明るい未来が待っているはず。なぜなら本とは有史以来、人類が発明した最高の知識伝達手段だからである。
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