すでに文庫・新書バブルは崩壊? 勝ち残るのはどこ出版&新聞ビジネスの明日を考える(4/5 ページ)

» 2009年04月06日 07時00分 公開
[長浜淳之介,Business Media 誠]

ノウハウ本の売れ行きは、タイトルの付け方が9割!?

 また、話し方の専門家、福田健の3部作『人は「話し方」で9割変わる』『女性は「話し方」で9割変わる』『子どもは「話し方」で9割変わる』(いずれもリュウ・ブックス アステ新書)のロングセラーは、先に竹内一郎『人は見た目が9割』(新潮新書)のヒットがあってのタイトルの勝利でもある。

 ノウハウ本はタイトルの秀逸性が売れ行きを決める面があり、編集者はコピーライターのセンスが要求される。“9割本”は依然、賞味期限中である。

 単行本の売れ筋である脳関連本は新書でも好調。この分野の最大のヒットメーカーは脳科学者の茂木健一郎で、2000年代初頭の養老孟司の位置に替わって就いた印象だ。『化粧する脳』(集英社新書)、『欲望する脳』(集英社新書)、『ひらめき脳』(新潮新書)、『脳の中の人生』(中公新書ラクレ)、『すべては脳からはじまる』(中公新書ラクレ)、『「脳」整理法』(ちくま新書)など、多彩なレーベルから出版している。

ノウハウ本の売れ行きはタイトルの付け方で大きく変わる

 他の著者では、林成之『<勝負脳>の鍛え方』(講談社現代新書)が目に付く。脳関連本は脳に詳しい学者、医者を投入して科学的アプローチで迫らないと、読者に説得力を持たせにくいので、まじめな著者にいかに読みやすく書かせるかが、編集者の腕の見せ所だ。

 あとは、不況を受けた経済危機にまつわる本で、神谷秀樹『強欲資本主義 ウォール街の自爆』(文春新書)、浜矩子『グローバル恐慌――金融暴走時代の果てに』(岩波新書)、堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)、水野和夫『金融大崩壊――「アメリカ金融帝国」の終焉』(生活人新書)などといったタイトルに当たりが出ている。

 新しいテーマでは、山田昌弘・白川桃子『「婚活」時代』(ディスカバー携書)が NHKの金曜夜10時の新ドラマ枠第1号で、4月より『コンカツ・リカツ』としてドラマ化されるのが面白い。

 あと手堅いのは、漢字を筆頭に、日本や東洋の文化を見直す系のテーマ。江戸、昭和、歌舞伎、能楽、茶道、華道、武士道、気功、漢詩等々、何が当たるかは難しいが、良い著者をセレクトして平易に記述すれば、スマッシュヒットが打てる分野だ。『白川静 漢字の世界観』(平凡社新書)などは最近のヒットである。

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