前置きはこれくらいにして、インサイトのレポートに入ろう。
今回、筆者がロングドライブテストとして選んだのは、東京都内から宮城県仙台市までの往復約800キロ。GW中の「休日特別割引」を利用し、1日で往復する強行軍だ。なお、インサイト側の設定では、低燃費走行モード用の制御を行う「ECON」を常時ONにしておいた。
早朝5時。眠い目をこすりながらインサイトで出発。朝の首都高はまだ混雑しておらず、合流車線に向かう加速もスムーズだ。
インサイトの搭載するエンジンは、1300ccの排気量を持つi-DSI型4気筒SOHC。気筒あたり2つの点火プラグを持ち、タイミングをずらして着火する位相差点火をさせることで高トルク・低燃費・低排出ガスを実現したエンジンだ。その基本設計はフィットと同じであり、可変バルブタイミング機構のi-VTECなどの仕様をインサイト用に作り直している。
この主動力であるエンジンを補うのが、新開発の薄型ブラシレスモーター。IMAの基幹部品として、エンジンだけで不足するパワーを補う。しかし、その振る舞いはとてもスムーズであり、メーター内のインジケーターを見ていないと、モーターでアシストされたことすら気付かないほどだ。
インサイトのすごみは、このエンジンとIMAがバランスよく協調することだ。小排気量エンジンが苦手とする急加速をモーターでアシストすることで、合流時の加速やコーナーからの立ち上がりでも、小気味よく“スッ”と加速することができる。小型エンジン搭載のコンパクトカーにありがちな「もたつき」をほとんど感じないので、ストレスなく首都高を走ることができる。
首都高を抜けて東北道に入ると、今度は高速巡航だ。GW中とはいえ朝早いため渋滞はなく、インサイトは追い越し車線の流れに乗りながら、ややハイペースで走り抜ける。
こうした高速巡航はこれまでハイブリッドカーが苦手としてきた領域だ。なぜなら、高速巡航時はガソリンエンジンの方がエネルギー効率が高く、一方でモーターとバッテリーという重量物を搭載することが実用燃費面でマイナスに働くからだ。
この課題に対してインサイトは、パラレル方式という小型軽量なハイブリッドシステムの採用と車重の軽量化、さらに車高を低くし、空気抵抗を極限まで減らした独特のデザインで対処している。そのため高速巡航に入っても、燃費計のデータはほとんど悪化しない。
そして、もう1つ筆者が予想以上と感心したのが、車内の快適性だ。
前述の通り、インサイトのフォルムは実用燃費向上のために空気抵抗が減らされ、車体下にはこの価格帯のクルマではめずらしい整流板まで用意されている。さらに遮音材や遮熱材は一般的な素材で十分な性能を確保しようとすると重量がかさむ。そのためインサイトでは、アメリカの3M社やスイスのリエター社が開発した最新の軽量高性能な遮音材や遮熱材を採用した。フロントウィンドウもエアコン効率を高めて燃費を良くするため、レジェンドなど国産高級車のみが採用する高性能ガラスを使用しているという。
これらの効果は絶大で、高速巡航時のコンパクトカーにありがちな、耳障りなエンジン音やが風切り音がまったくといっていいほどない。時速100キロ前後のキャビン内の快適性は、これは高級車かと錯覚するほどだ。もとはといえば、すべて燃費のために採用された高性能部品であるが、それが高い快適性という思わぬ副産物になったようだ。
それでは、高速巡航が中心となった東京〜仙台の実用燃費はどうなったのか。
結果から述べると、インサイトのECUが計測した実用燃費は19.7キロ/Lだった。カタログ燃費の30キロ/L (10・15モード)や26.0キロ/L (JC08モード)には及ばないが、白状すれば筆者はこのロングドライブで、エアコンやオーディオは積極的に使い、高速巡航では意図的にハイスピードを維持した。経済速度でエコ走行したわけではなく、むしろ“積極的に走った”結果なので、実用燃費は十分に良かったと言えるだろう。
なお、別の日に都内で1日乗ったときの燃費は19.8キロ/Lだった。その日は休日だったが、都内は比較的混雑しており、ストップ&ゴーが多いという道路環境。モーターアシストやアイドリングストップの効果が得られやすいという状況だった。
こうして見ると、インサイトはハイブリッドカーが得意とする市街地走行だけでなく、高速巡航のロングドライブでも著しく燃費が悪化しないことが分かる。今年はETC休日割引の恩恵で、長距離のクルマ旅行をする人も増えると思うが、そういった用途でもインサイトはエコロジーかつエコノミーな選択肢となりそうだ。
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