弾圧を恐がり、“感度”が鈍い編集者たち――週刊誌が凋落した理由（後編）：集中連載・週刊誌サミット（1/3 ページ）

[土肥義則，Business Media 誠]

　『月刊現代』『諸君』『論座』など、雑誌の休刊が相次いでいる。中でも週刊誌を取り巻く環境は厳しく、「今年中に数誌が休刊になると、ささやかれている」（元木昌彦氏）。多くの週刊誌は実売部数の減少に歯止めがかからない状況だが、このまま“衰退”していく運命なのだろうか。

　そんな状況を打破しようと、5月15日、“週刊誌サミット”が東京・四谷の上智大学で開かれた。その第1部の座談会に登壇したジャーナリストの田原総一朗氏、ノンフィクション作家の佐野眞一氏、上智大学教授の田島泰彦氏らが語った声を紹介していく。

　→編集長は度胸がない＋愛情がない……週刊誌が凋落した理由（前編）

週刊誌に弾圧が来るのは当たり前

元木昌彦（司会）：本日は『週刊新潮』の前編集長・早川清さんにも出席してくれるようにお願いしたが、「遠慮させていただきたい」とのことだった。5月14日に発売された『週刊新潮』で、「愛人同伴『ゴルフ＆温泉』の小旅行でGWを謳歌した『鴻池官房副長官』涙目懺悔録」という記事があった。（『週刊新潮』の記事を受け）朝日新聞や他の新聞でも、官房副長官のことが書かれていた。

　この『週刊新潮』の記事はW不倫の内容ではあるが、非常によく取材をしている。スキャンダルではあるが、私は久しぶりに面白く読ませてもらった。確かに『週刊新潮』問題※はまだまだ不可解な点も残っている。田原さんがお話した通り、週刊誌は新聞やテレビにはできないことがたくさんあるのではないだろうか？

※『週刊新潮』が朝日新聞襲撃事件の「実行犯」を名乗る男性の手記を掲載し、その後誤報を認めて謝罪した問題。

ジャーナリストの田原総一朗氏

田原総一朗：実は各メディアはそれぞれ戦っている。例えばテレビの番組を作るということは、必ず弾圧がかかってくる。弾圧がかかることを前提にテレビをやっている。私自身でいえば古い話になりますが……というか新しい話は差し支えがあるので言えない（笑）。かつて長期信用銀行をどうするかという問題が起きた。これは小渕内閣のときだ。テレビで民主党の菅直人さんは「長銀を潰す」といっていたが、自民党・池田隼人さんの娘婿（池田行彦氏）は「長銀を生かして、お金を出す」といっていた。

　この問題についてどの新聞も「玉虫色の決着」と書いていた。こんなバカなことがあるかと、大喧嘩（ケンカ）になった。そして翌週、またその問題を報道しようとした。そうするとテレビ朝日の上の方から「止めてくれ」といってきた。誰が「止めてくれ」といっているのか？　と聞いたら「社長だ」という。そこで社長に聞いたら「自民党から弾圧されている」ということだった。自民党の誰だと聞くと、「幹事長だ」という。

　そこで私は当時の幹事長、森喜朗さんに「弾圧するのか！」と電話でいった。そうすると森さんは「弾圧ではない。頼むから止めてほしい」と。余談だが、日曜日の朝の番組は3つある。テレビ局の名前はあえていわないが、1チャンネルと8チャンネル……イチかバチというが（笑）。「（森さんから）この2つのテレビ局には話がついた。（2つとも）放送しない。だから田原さんの番組も止めてくれ」といってきた。「しかし、そういうわけにはいかない。やったらどうなる？」と聞くと「テレビ朝日が困る。困るからやってみろ」といってきた。しかし私はこの問題を報道した。ちなみに1チャンネルと8チャンネルは関係のないものを放送していた。

　そのとき番組に出演したのは、民主党が江田五月さん、自民党が石原伸晃さん。しかし翌月、石原さんはすべての役職からはずされた。それ以後、私の番組には10カ月間、自民党の3役は出てこなかった。こういうことは日常茶飯事。この程度の喧嘩はテレビでもやっている。だから週刊誌に弾圧が来るのは当たり前。（週刊誌は）弾圧が来るのを恐がっているのではないだろうか。

　もっとハッキリ言えば、今週（5月12日発売）の『週刊朝日』で小沢一郎さんが辞任したことについて書いた。あの辞任の問題で各新聞はバカみたいに「岡田が勝つか？　鳩山が勝つか？」ばっかり。あの小沢さんを追い込んだのは検察だ。検察がアンフェアなことをした。もし小沢さんの秘書がやっているとなれば、自民党の二階俊博さんとか……このほかにも該当する人がいる。しかし検察は何もしない。たぶんあきらめたのだろう。

　小沢さんをやっつけたのは「検察だ」「アンフェア」だと、なぜ書かないのか？　どこかの新聞が書いたか？　一行も書いていない。（この問題を）私は今週の『週刊朝日』で書いたが、なぜ他のメディアは取り上げないのか？