著者プロフィール:竹林篤実(たけばやし・あつみ)
東大寺学園高校卒業、京都大学文学部卒業。印刷会社営業職、デザイン事務所ディレクター、広告代理店プランナーなどを経て、2004年にコミュニケーション研究所の代表。ブログ:「だから問題はコミュニケーションにあるんだよ」
人気ブログを集めて印刷して無料配布する。ブログ新聞がシカゴで創刊された。「何でもオンライン化」の流れとは、真逆の発想が面白い。このブログ新聞、果たして成功するだろうか?
ブログ新聞『The Printed Blog』は、ネット上のブログを集めて編集し、新聞形式にレイアウトした上で(実際は雑誌に近いようだが)印刷する。でき上がったブログ新聞は駅など人の集まる場所で無料で配布するそうだ。
収益源は広告である。「広告主は、1000部につき20ドルから広告スペースが買える」(日経産業新聞2009年6月8日9面)という。そして「数年で全米に約2000のロケーションを展開し、年商30億ドルを目指す計画だ」(同)。30億ドルといえば、ざっと3000億円である。
ちなみに朝日新聞の平成20年9月中間連結決算によると、売上高は2698億円(関連リンク)。だから、このThe Printed Blogは年間でざっと朝日新聞並みの売り上げを目指していることになる。
実際にどんなブログが、掲載されているのだろうか。興味津々でニューヨーク版をダウンロードしてみた。見た感じは新聞というよりも、雑誌に近い。きれいなカラー版で、写真が目を引くレイアウトになっている。
記事を2本ほど流し読みしてみたが、面白いとは思えなかった。ニュースというより論考みたいな感じだ。ただ、掲載されている写真はいい。これを眺めているだけでも楽しい。これが無料で手に入る。筆者には記事の面白さは理解できなかったが、そうじゃない人がいることは想像できる。
とはいえ同じ内容の記事が、すでにどこかのブログにアップされているわけだ。それを紙に印刷したものを読みたいかどうかがポイントになると思うが、果たして読みたいものだろうか。
意外に、読みたいと思う人は多いと思う。モニター上の文字と紙にきっちりと印刷された文字を比べるなら、個人的には印刷物の方がはるかに読みやすい。
もちろん、これについては個人差が出るところだ。筆者は数えで50歳になる。老眼である。その上 “ド近眼のド乱視”だ。液晶画面で小さな字を読むのはかなりつらい。Macユーザーゆえに、比較的キレイで読みやすいフォントではあるが、それでも文字サイズが小さくなるときつい。
読むなら活字、デザインするなら写植――で育った世代でもある。行頭・行末処理に始まり行間、字間への配慮などリーダビリティへのこだわりは結構ある。となれば新聞とWebを比べれば、はるかに新聞の方が読みやすいのは当たり前だ。
ブログの中には確かに、モニターでざっと読むのではなくプリントアウトして読みたいものがある。ところがWebページをそのままプリントアウトしても、お粗末な印刷物にしかならない。かといってテキストだけ抜き出して、レイアウトソフトを立ち上げて……なんて面倒なことまではしたくない。
意外にブログ新聞需要はあるんじゃないかという気がする。
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング