地域みんなで使えるICカード「めぐりん」の挑戦神尾寿の時事日想・特別編(3/4 ページ)

» 2009年09月04日 11時17分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

地方の生活拠点「イオン」と地域を結ぶめぐりん

 このようにめぐりんは、地域ICカードとしての普及をめざし、ユーザーの利便性向上はもちろんのこと、中小の加盟店でも使いやすいように多くの工夫が凝らされている。しかし、その一方で、めぐりん展開の拠点となっているのは、大規模ショッピングセンター(SC)のイオンだ。地域の商業活性化とイオンとの提携というのは、一般的な両社の対立イメージからすると違和感を感じるが、「そうした先入観は間違っている」と善正氏は指摘する。

めぐりんカードの「拠点」にもなっているイオンショッピングセンター。地域ICカードにとって、大規模SCが重要と位置づけられているのは特徴的だ

 「地方のライフスタイルを考えますと、イオンなど大規模ショッピングセンターは生活に欠かせない存在になっています。生活拠点と言ってもよく、生活に根ざした地域ICカード事業を、これらショッピングセンター抜きで考えることは、まず第一に(めぐりんなど地域ICカードを)お使いいただくユーザー視点で考えられない。

 その一方で、イオンなど大規模ショッピングセンターは(WAONなど)全国区の電子マネーと独自ポイントサービスを導入していますが、これらもショッピングセンターの中でしか通用しないのであれば、地方のライフスタイルすべてをカバーできるものになりません。しかし、こうした(大手流通小売り事業者の)電子マネーやポイントサービスは規定が細かかったり、原資負担や運用面での柔軟性といった課題から、地域の中小店舗が導入しにくいものになっている。

 地方のライフスタイル全般で使えるICカードのサービスを考える上では、これらの問題を解決し、大規模ショッピングセンターと地域経済の架け橋になるようなサービスプラットフォームが必要なのです」(善正氏)

 この答えが、めぐりんのサービスモデルというわけだ。前述のとおり、めぐりんはWAONと連携しているため、ユーザーの生活拠点であるイオンのショッピングセンターで利用できる。一方で、加盟店側の裁量権が大きく“WAON必須”ではないため、地域の中小店舗でも参加しやすい仕組みになっている。めぐりんという地域ICカードのサービスがクッション役となることで、大規模ショッピングセンターと地域経済の“緩やかな連携”が実現できているのだ。

 なお、めぐりんがイオンと深く関わっているのは、「四国はセブン&アイホールディングスが進出していないので、イオングループが圧倒的に強い地域だから」(稲毛氏)だという。

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