昔はみんなこんなにインプットしなかった。というより、できなかった。インプットは時間もコストもかかる。今は大学院までいく人も多いですが、昔は中卒で働く人も多かった。インプットの年数が倍になっている。
もちろん、昔はインプットが足りないからアウトプットにも限界があった。新技術を知らないと、新商品はできない。で、経済発展に伴って、みんなインプットに力を入れるようになった。
企業はもともと「工場=製品を作り出すアウトプットの場」でした。そのうち「研究所」という「インプットの場」にもお金をかけるようになった。研究所の意義は、よりよいものを工場でアウトプットするためだった、はず。
ところが、いつしか「インプットのためにインプットする」人が研究所に集まり始めた。ずーっと研究(=インプット)している。アウトプットにつながらなくても気にしない。アウトプット目的のために始めたインプット作業が自己目的化し、「巨額の研究費を投資しているのに、まったく新製品の出ない会社」ができてしまった。そのくせ「研究所で働いている人の方が工場で働いている人よりエライ」みたいな風潮になってくる。
本来、民間企業の研究は製品につながらなければ意味がありません。インプットだけでは、(自分の満足はあっても)他者にとっては何の価値もありません。
経済の右肩上がり時代は、「アウトプットにつながらないインプットのコスト」も企業は負担できました。でも、今は「新しい価値」を世に提供できない企業は淘汰されます。
大事なのはアウトプットです。日本がここまで高度成長したのはアウトプットが多かったからです。アウトプットなしにインプットし続ける人が増えたら、将来はとても暗い。
と思っていたら、最近は新しい傾向もある。就職環境が厳しい中で「とりあえず起業する」人も出てきた。走りながら経営を学ぶ彼らは、MBAで経営を勉強しつつ、起業も経営もしない人よりよほどましです。
自営業の友人が「成長機会が乏しい」と言っていた。確かに、自分が先頭に立ってビジネスをやっているとアウトプットに追いまくられ、なかなかインプット時間を確保できない。
それでも「インプットだけ」より「アウトプットだけ」の方がいい。インプットだけの人なんて、いてもいなくても世の中は何も変わりません。
就職や転職の時だって問われるのは「あなたは何が(アウトプット)できるの?」ということです。それなのに履歴書に輝かしい「学歴」や「資格」を連ねて、「僕はこれだけインプットしました!」とアピールする人がいる。
何がすごいのか全然分からない。学歴や資格はインプットの記録ですが、問われるのは「(そのインプットで)どんなアウトプットを出せる(出した)の?」という点です。
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