電子レンジ以来の発明!? 家庭で使える真空調理器の可能性郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2009年12月10日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

真空調理の“5S”

 まずは開発元のEades Appliance Technology LLCが提供する動画からピックアップした画像を見ていただきたい。

 最初に調理素材に味を付ける。使うのは塩・こしょう、ハーブ、バター程度。素材の力を引き出すのが、この調理法の核心だからだ。味付けした食材を真空パック用のジップロックに入れる。


 次にパックからエアをハンドポンプで抜く。真空パック器を使ってもいい。そして、SousVide Supreme本体に指定量の水を注ぎ、密封したパックをラックにセットする。最大12食まで同時調理可能だ。最後にフタを閉めて、レシピ通りに調理時間をセット。マシンが仕上がりまでの温度を自動的に管理する。


 ステーキなどの料理で焦げ目が欲しい場合は、調理後にバーナーで焦げ目を付けるか、フライパンで数十秒ジュっとすればいい。このステップを夫妻は“5S”で表現する。と言っても無味乾燥な「マネジメントの5S」ではない。「Season(味付け)」「Seal(密閉)」「Simmer(グツグツ)」「Sear(焦げめ)」「Serve(召し上がれ)」ということだそうだ。

真空調理法とは

 真空調理法に適する料理は、牛や豚、羊など肉料理から、サーモンやロブスターなどの魚料理、根菜や葉もの野菜まで。調理時間と温度は素材の厚さで変わり、厚さ1インチのポークチョップは60度の水温で4時間〜8時間、同じくビーフステーキはミディアムは60度、ミディアムレアは56度、サーモンステーキのミディアムレアは52度で45分。1度単位の細かな調理ができる。

 食材そのものの味を引き出せると言われる真空低温調理。そもそもは1970年代、フランスの食肉加工業者ジョルジュ・プラリュ氏が、「フォアグラのうまい調理法がないか」と問われて研究したことに始まる。数年にわたる研究の末たどり着いたのが、ビニール袋にフォアグラを入れ、真空状態にして調理する方法だった。

 量は目減りせず、うまみを逃さず、味も均一。科学的な根拠に基づく調理温度調整もできる。90度以上では、食物繊維に含まれるセルロースが破壊される。62度以上では、動物性タンパク質から水分が出て素材が収縮する。58度以下では、細菌が死滅しない。そのため、食材により適切な調理温度帯があるのだ。

 ほかの調理法と何が違うのか。焼くと脂(うまみ)が落ちる。マイクロ波だと食材の細胞が壊れ、おいしさが損なわれる。オーブンは表面に焦げ目が付いてパリッとするが、内部まで熱が通りにくい。圧力鍋は高温かつ高気圧で食材を加工するが、これは低温調理で味を引き出す真空調理とは真逆だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.