「これからはマーケティングだ!」と言う前に(1/2 ページ)

» 2009年12月28日 08時00分 公開
[伊藤達夫,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:伊藤達夫(いとう・たつお)

THOUGHT&INSIGHT株式会社代表取締役、東京大学文学部卒、認定エグゼクティブ・コーチ(JIPCC)。コンサルティング会社にて食品、飲料、化学品メーカーなどのマーケティング寄りのプロジェクト、官公庁などのプロジェクトに携わる。その後、JASDAQ上場の事業会社に移り、グループ戦略、事業戦略、業務改革などに携わる。結果的に最年少でのマーケティング部門、部門長となる。ブログ「ゆるーいコンサルタントな日々


 「マーケティングが大事なんだろう!」と幹部を叱責する経営者を私は何度も見たことがあります。そして、“マーケティング力強化プロジェクト”と銘打った業務改革プロジェクトもたまにあります。そのスローガンに対する具体的なアクションでよくある話としては、市場調査をやたらとするようになって、データが会社にあふれるといったことがあります。

 あふれるならまだいいですが、マーケティングと名前の付く部門を作ってみたら、その部門のスタッフが自社の商品が売っている店舗に行ってアンケート調査をして、リーダーに報告しているというようなもの。リーダーは頭を抱えます。「それでどうしろと言うんだ……」と。

 もしくは、「広告宣伝がマーケティングだ!」と言って広告宣伝予算が増えたり、またある時は営業マンへのプレッシャーが「マーケティング力を強化するんだ!」という言葉とともにかけられたりもします。

 マーケティングとは何でしょうか? 「売れる仕組みを作る」と言う人もいます。またある人は「集客」に集約して、マーケティングという言葉を使います。またある人は、「商品を作り出すこと」をマーケティングと言ったりします。

 私が一番汎用性があると思うマーケティングの定義は、米国マーケティング協会のものです。本質だけを取り出して翻訳すると、「持続的な交換活動を生み出すための総合的な活動」になります。

 商売を交換活動としてとらえるのがマーケティング概念の特徴です。靴屋さんであれば、自社の靴とお客さんのお金を交換しているととらえます。

 こういった交換を生み出すためにやることは何でしょう? 新しい靴を考えることも必要ですし、「どう作るのか?」を考えることも「どう宣伝するか?」も重要です。そして、「対面でどのようにオススメするのか?」というのも大事ですね。商品を考えてお客さんに届けるまでの一連のプロセスが全てマーケティング活動なんですね。

 そして、時代によっても大事なことは違います。作れば売れる時代というのが、どの商品にもあります。その時代は、ただひたすら作り続けることがマーケティング活動において一番重要です。それが一番もうかります。

 ちょっと前までは、携帯をタダで配っていましたが、契約者数はうなぎのぼりに増えていましたよね。NTTドコモがどんどん成長していたころです。 ただ、しばらくすると作るだけでは売れなくなります。そうすると、何か機能的に違ったものを商品に付加することで、売れるようになります。携帯にカメラがついて、写メールが出てきて、みんなカメラつき携帯を買いませんでしたか? そういうことですね。

 そして、機能が極まってくると、機能では差別化できなくなります。そうすると、強力なプロモーション、販売力によって売れるという風になります。まあ、携帯なんて機能的にはどこでも一緒ですが、ソフトバンクのCMが一味違いますよね。機能が極まると販売のやり方によって、差をつける時代がやってくるということです。

 しかし、販売力によって解決できなくなってくると、「お客さんが何を求めているのか?」をしっかりとらえて、その上でそれを体現した商品を作り、お客さんとコミュニケーションをしっかりしていかないと売れない時代がやってきます。携帯電話が本当にお客さんのことを考えた活動をするようになるのは、もう少し先でしょうね。

       1|2 次のページへ

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.