2010年は「カーシェアリング元年」になるか神尾寿の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年01月06日 13時09分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。

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 環境意識の高まりと、クルマの利用ニーズの多様化。これらを受けて、クルマや自転車のシェアリングサービスが活発化してきている。日本国内だけ見ても、この分野の老舗であるオリックス自動車の「プチレンタ」はもちろん、コインパーキング事業者大手のパーク24がマツダレンタカーと展開する「カーシェア24」や、中古車販売大手ガリバーインターナショナルの「カーシェアメイト」などが積極的に利用エリアを拡大。都心からスタートしたカーシェアリングサービス「careco」などもスタート(参照記事)。都内では、あちこちにカーシェアリングの利用ステーションを見かけるようになってきた。

 カーシェアリングは新たなクルマ利用スタイルとして、どこまで広がっているのか。そして、カーシェアリングの周辺ビジネスはどこまで拡大するのか。今回の時事日想は特別編として、2010年の注目ビジネスである“カーシェアリング”にフォーカスしてみよう。

相次ぐ利用エリア拡大。高まるカーシェアリングの使い勝手

 カーシェアリングは複数のユーザー(会員)でクルマをシェアし、“必要な時だけクルマを利用する”サービス。料金体系は「基本料+15〜30分単位の時間課金」で、クルマの購入費はもちろん、駐車場代や保険料、ガソリン代などの維持費もいらない※。利用予約はPC向けのWebサイトや携帯サイトから行い、鍵は専用のICカードかおサイフケータイを使うため、クルマを使う度にレンタカーのような事務手続きをする必要はない。こうした特徴からカーシェアリングは、通勤・通学など日常的な移動にクルマを必要とせず、駐車場代が高い都市部向けの新たな公共交通サービスとして広がってきている。

※カーシェアリングではガソリン代は利用料金に含まれている。レンタカーのようにユーザー負担で給油しなくてよい。

 とりわけ2009年から2010年までは、カーシェアリング事業者各社の利用エリア拡大が相次いだ。

 例えば、最大手のオリックス自動車では自社での貸出ステーション開発のみならず、提携案件が増加。ファミリーマートや大阪府豊中市と提携するなど、利用エリア拡大が急ピッチで進んでいる。最近は、「マンションの敷地内駐車場が埋まらず、その一部を貸出ステーションにしたいという申し出も増えている」(オリックス自動車)という。

オリックス自動車「プチレンタ」の貸出ステーション。最近は写真のようにマンション敷地内駐車場の一部を使う例も増えているという

 また、プチレンタでは環境貢献への取り組みにも積極的に力を入れており、まだ一部の貸出ステーションのみではあるものの、三菱自動車の電気自動車(EV)「iMiEV」を導入。EVシェアリング事業にも意欲を見せている。

 一方、貸出ステーションの展開で有利なポジションにあるのが、パーク24の「カーシェア24」だ。同社はコインパーキングで最大のシェアを誇る「タイムズ駐車場」を手がけており、カーシェア24はこのタイムズ駐車場の一部を貸出ステーションとして利用することで、効果的なインフラ投資・利用エリアの拡大を行っている。2009年11月末時点の貸出ステーション数は全国136カ所、会員数は約3000人で256台の車両が運用されているという。

 カーシェア24でユニークなのが、カーシェアリング用の車種選定だ。カーシェアリングで使用するクルマは、燃費がよく維持費の安いコンパクトカーや軽自動車を用いるのが一般的。カーシェア24でも主力車種はマツダの「デミオ」だが、一部の貸出ステーションではBMWの3シリーズやアウディ A4、フィアット 500など輸入車も取りそろえている。これらのクルマも通常料金で借りられるため、「カーシェアリングでも、おしゃれなクルマに乗りたい」という人にぴったりなのだ。

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