「必要なのは才能発掘の次のステップ」――日本のアニメ業界に足りないものコミックマーケットシンポジウム(2/4 ページ)

» 2010年01月18日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

才能発見の場としてインターネットが台頭

 ただ、ここ10数年は才能発見の場として、インターネットが台頭してきています。みなさんはYouTubeやニコニコ動画をよくご覧になると思うのですが、今、YouTubeでは「YouTube VIDEO AWARDS JAPAN 2009」というイベントを行っています。これはYouTubeにアップされたノミネート作品にユーザーが投票して、グランプリを決めようというイベントです。

 私が注目している作品を挙げると、「向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった」というものがあります。制作した植草航さんは東京藝術大学大学院映像研究科でアニメーションを専攻しているのですが、これはYouTubeの中では非常に話題になった作品で、ジャパニメーションの良いところを抽出して、そこにアート性を加味したもので、世界の人に見せたらビックリするだろうと思います。

向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった

 その一方、「パンク直し」というユニークな作品もあって、自転車屋のおじさんがパンク直しを始めてから終わるまでをアニメーションで表現しているという内容です。「ただそれだけでもアニメーションって面白いんだよ」ということが伝わってきて、「向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった」とは真逆の発想で作られた作品です。

パンク直し

 制作者たちは「YouTubeにアップした途端、世界中から仕事のオファーが来た」というようなことを話していて、インターネットは先ほど挙げたフェスティバルやテレビ以上に才能発見の場として定着しているのではないでしょうか。ちなみに今回のイベントでは作品を評価するコミュニティもインターネット上にできていて、「向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった」と「フミコの告白」の一騎打ちではないかと書かれていたりして、「大変成熟した才能発見の場がある」とも言えます。

※結果的には「フミコの告白」が受賞した。

フミコの告白

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