メディアはどのように変化するのか? 米国の最新事例上杉隆×小林弘人「ここまでしゃべっていいですか」(5)(2/3 ページ)

» 2010年01月26日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

上杉 かつて個々のブロガーが問題点を見つけ出す、といった動きがありましたが、それをみんなで細分化して行うということですね。

小林 そうです。このほかサンフランシスコでも新しい動きがありました。ジャーナリストが「これから○○というテーマを追いたい。しかし、それを取材するのに1000ドルかかる」といった形で、寄付を募っていきます。そして集まったお金で取材し、できあがった記事は誰でも読めるようにしています。Spot.usというWebサイトでその試みは行われています(関連リンク)。スポンサーをネット上で募ることを「クラウドファンディング」と呼びますが、それがジャーナリズムに使われた好例ですね。

米国のメディア事情について語る小林弘人氏(左)

フリージャーナリストの“ネック”

上杉 コロンビア大学でもそうした制度がありますね。自分が取材したいテーマを説明し、お金を募ります。このシステムは昔からあって、米国ジャーナリズムの基礎になっていますね。小林さんがさきほどお話された、インターネットで寄付を募るという形とよく似ています。

小林 先のSpot.usでは、インターネットの場合は記事が掲載されたときにスポンサーの名前(個人名)や顔写真がリストとして掲載されます。まさに市民ジャーナリズムの新しい形ですね。

上杉 非常に興味深いですね。これからはそういったシステムが有効な手段になるかもしれない。

小林 米国では「これからのジャーナリズムは横のつながり大切だ」といった考え方のメディアやブログが立ち上がってきています。僕は「パブリッシング2.0」というWebサイトの会員にもなっていますが、そこは全世界のジャーナリストの住所録的なもの作り、参加者らによる記事投稿などが試みられています。リンクジャーナリズムの質を上げていこうというこの方向性には共感できます。さまざまな新しいツールを開発し、配布しているのも興味深いところです。

 まだこのシステムはビジネスとして成功を収めていませんが、こうした面白い試みは今後さらに出てくるでしょうね。

上杉 フリージャーナリストとして一番ネックになるのは、先行投資しなければならないこと。出版社などはある程度のネタが固まらないと、取材費を出してくれません。でも取材というのは、とにかくどんどん当たっていって、ネタになるまでお金と時間がかかるもの。つまりお金と時間がなかなか確保できないため、日本ではフリージャーナリストが減ってきています。

 しかしジャーナリストに寄付するシステムやリンクジャーナリズムが成熟すればば、誰でもスタートラインに立つチャンスが生まれてきますよね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.