あま〜いけど、実はちょっとほろ苦い「チョコレートスパークリング」の意味それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2010年01月26日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年1月22日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


「チョコレートスパークリング」(出典:サントリー)

 1月19日の発売のサントリー「チョコレートスパークリング」が話題だ。実は話題に乗っかるのは嫌いじゃない。

 まずは月並みに試用レポートから始める。封を開け、グラスに注いだ瞬間から強烈なチョコレートの香りが広がるのに驚かされる。飲んでみると甘い味わいと香りで、本当にチョコレートを食べている(飲んでいる)かのような感覚に陥る。それでいて、成分表記の注意書きを見ると「チョコレートは使用しておりません」とある。スゲー、サントリー。

 ……と、これまた月並みに、さまざまな人がブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、Twitterで書いているような感想を抱いた筆者だが気になる。サントリーの狙いは何だろうか。

 2009年12月22日に発表されたサントリーのニュースリリースを見ると、「バレンタインシーズンにぴったりの、新しい味わいの炭酸飲料です」とある。間違いなく、季節限定商品。

 季節限定の炭酸飲料といえば、サントリーがペプシブランドで年1〜2回展開する「変わり種ペプシ」はすっかり市場に定着したといえるだろう。2009年は「和」テイストにこだわって、「しそ」と「あずき」であった。その味には賛否両論あるものの(筆者は結構好きだ)、サントリーの担当者はメディアの取材に対して、「(話題作りのためなので)2本目を買ってもらおうと思ってはいない」と言い切っている。

 変わり種ぺプシの売り上げ目標は30万ケース。ペプシブランド全体の目標販売数3000万ケースからすると、わずか1%しかない。しかも、ペプシブランドを使用するため、米国ペプシコとの調整は煩雑を極め、商品化まで1年以上を要するという。

「ラブモードジンジャー」(出典:サントリー)

 話題作りを手っ取り早くやるには、サントリー独自ブランドで展開することだ。今回の「チョコレートスパークリング」に先行すること約2カ月。11月2日にニュースリリースが配信され、同24日から期間限定された「ラブモードジンジャー」という商品をご存知だろうか。リリースには、「“クリスマスムードが高まる季節に、恋愛気分を盛り上げる大人の炭酸飲料”をコンセプトに開発した、カロリーゼロのジンジャーエールです」とあった。派手なボトルのパッケージと、ピンク色のジンジャーエールらしからぬ色合いが多少話題になったものの、今回のチョコレートスパークリングほど大きな話題にはならなかった。

 そして恐らく、2カ月のタイムラグであれば、この2つの商品はほぼ同時に商品開発が行われていたはず。今回のチョコレートスパークリングの成功によって、話題作りという目的からすると、「1勝1敗」という結果だったというところだろうか。

 両者の成否を分けたものは、話題への乗りやすさではないだろうか。

 「チョコレートスパークリング」でのGoogleの検索結果は約56万件(1月22日時点)。「ブログから、話題を知る、きざしを見つける」というkizasi.jpで1月22日のブログ上の話題は「チョコレートスパークリング」が第2位(第1位は「オトコノカラダ(嵐・櫻井翔)」)。「ラブモードジンジャー」のGoogleの検索結果は約10万件。kizasi.jpのトップ10ランキング入りはなかったと記憶している。

 クリスマスは消費の一大イベントではあるが、シャンパンなどの「スパークリング飲料」を購入するというイメージに直結するほど認識は高くないだろう。その点、バレンタインは「チョコレート」という一点に集中する。

 さらに面白い記事を見つけた。

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