あま〜いけど、実はちょっとほろ苦い「チョコレートスパークリング」の意味それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

» 2010年01月26日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]
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チョコレートの甘さとは裏腹に、ほろ苦いメーカーの思い

 「バレンタインデーに“告る”のは過去の風潮!?勝率は25.4%)」(東京ウォーカー1月19日)

 記事によると、バレンタインデーの日を“意中の人への告白の手段”と考えるのは、すでに過去の風潮であるということが明らかに……。逆の現象として、同性の友だちに贈る“友チョコ”が年々存在感を増しており、バレンタインデーを「イベントとして楽しめる日」と、ライトに考える女性が多くなっていることが浮き彫りとなったとある。

 要するに、単なる「お祭り」なのである。お祭りに面白い商品があれば、ついつい話題にしてみたくなる。たった147円であれば試しもしたくなるだろう。そんな背景が、話題作りをしたいサントリーの意図とピッタリマッチしたのだろう。

 特にコンビニが主戦場の商品は、チャネルにアピールできるか否かで、消費者の目に触れる、手に取られる前に勝負が決まっていることが少なくない。飲料の例で言えば、キリンビバレッジ「世界のキッチンから・とろとろ桃のフルーニュ」の例が顕著だ。コンビニエンスストアチェーン本部のマーチャンダイザーが気になり、取り扱いを決定する。フランチャイズのオーナーも気に入って発注する。その発注量でおおむね商品フェイスが決まる。短期決戦の季節限定商品で話題になりそうなものは多フェイスを確保できる。

「世界のキッチンから・とろとろ桃のフルーニュ」(出典:キリンビバレッジ)

 チョコレートスパークリングは、今回、チャネル関係者というDMU(Decision Making Unit=購買関与者)のハートをまず、つかんだところがKSF(キー・サクセス・ファクター)だったのだ。残念ながら、「ラブモードジンジャー」はコンビニチェーン各店でだいたい2フェイス程度しか獲得できていなかったように記憶している。「チョコレートスパークリング」は多いところでは5フェイス獲得している。JRエキナカのコンビニNEWDAYSの狭小店舗でも4フェイス獲得しているのを確認した。バレンタインまでまだ少し時間がある。さらに、目にして手に取って、飲んで「あま〜い」という感想を持った消費者のクチコミはさらに加速するかもしれない。

 景気が低迷し、消費者の財布のひもはいまだ固く引き締められている。飲料の需要も、ミネラルウォーターは水道水の浄水で、茶系飲料は茶葉からいれるという用いられ方で代替され、売り上げが落ちている。炭酸飲料カテゴリーは唯一、自分では作ることができないからかろうじて売り上げが落ちず、微増を保っている状況だ。炭酸は茶系ほどの常用性はない。「スッキリしたい時」や「ちょっと甘い物が飲みたい時」などのスポット需要がほとんどだ。

 1年前のサントリーの発表では、2008年の日本の炭酸飲料市場は2億1800万ケースだと試算されたようだ。季節限定商品や変わり種ペプシがそこに占める割合は極めて、極めて小さい。しかし、市場を支えるためには消費者への刺激が欠かせない。

 あま〜いチョコレートフレーバーの飲料の影には、そんなメーカーのちょっとほろ苦い思いが詰まっているように感じた。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。

「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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