会社の業績が悪く不安……どうすればいいでしょうか?中澤代表に“働く”について聞いてきた

» 2010年01月28日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 企業のトップに、読者からのさまざまな悩みについて答えてもらうシリーズ「“働く”について聞いてきた」。これまでSBIホールディングスの北尾吉孝CEOやJRウォータービジネスの田村修社長に答えてもらったが、今週からはウォルト・ディズニー・ジャパンの商品ライセンス部門「ディズニー・コンシューマ・プロダクツ」で日本代表を務める中澤一雄氏にバトンタッチ。日本マクドナルドや日本ケンタッキー・フライド・チキンといったファストフードでの職歴を持つ中澤氏は、“働く”ことについてどのような考えを持っているのだろうか。

男性Aさん(29歳)、ベンチャー企業勤務

 現在、新興のベンチャー企業に勤めています。創業以来業績は好調で、社内もフロンティア精神にあふれていました。しかし、折からの不況の影響を受けて当社も赤字決算となり、会社の雰囲気が沈み気味になっています。例えば「残業代を支払えないので、残業してはいけない」と言われているのですが、仕事は山ほどあります。それで仕方なく、仕事を家に持ち帰って“サービス残業”をしています。また細かいことを言えば「交際費」もなくなり、これまで行ってきた社内での飲み会が廃止されました。同僚が退職する場合でも、すべて自腹で送迎会を行っています。

 このほかにもいろいろな不満が、社員の間でたまっています。会社の業績が低迷しているため、「さまざまな経費を節減しなければならない」ということは理解できます。社員としても我慢するところは我慢しなければなりません。ただそうした環境の中で、どのようにすれば以前のような活気ある職場を取り戻すことができるでしょうか。社員レベルで、できることがあれば教えてください。


危なそうな会社に残ることも“リスク”

中澤一雄日本代表

 大手企業にはなくて新興ベンチャー企業にはある、ことがあります。それは経営陣と従業員の距離の近さ。より身近な存在だと思うので、会社の問題点などを議論してみてはいかがでしょうか。「会社業績が悪い。どうしよう」と嘆いてばかりいるのではなく、問題点をとことん議論することも大切です。議論した結果「いまの会社でも再生できる」と判断できれば、次の目標に向かって、仕事に集中すればいいでしょう。

 ディズニーでは「前向きな精神を持ち続けるという」考えがあります。常に前向きに、具体的に行動を起こすことが大切という意味ですが、前向きな気持ちだけではなく、あなた自身が何かしら行動を起こすことによって、大きく変わってくるのではないでしょうか。

 一方「会社に未来はない」と判断すれば、転職をオススメします。「転職=リスク」という考え方もありますが、危なそうな会社に残るということもリスク。あるヘッドハンターはこのように言っていました。「転職しても、成功するのは半数ほど。転職するのはリスクがあるので、いまの年収の3割アップくらいでないと、転職のリスクはカバーできない」と。Aさんの場合、ひょっとしたら転職するよりもいまの会社に残る方がリスクが高いかもしれません。なので、よく考えて「転職するのか、会社に残るか」を決断するべきでしょう。

 また「会社の経営が危ないかどうか」を見極めるビジネスセンスも、日ごろから磨いておくことが必要です。どのようにビジネスセンスを磨くかといえば、新聞や雑誌、ネットなど、より多くの情報を入手すること。また「自分が経営者だったら……」という視点で、物事を考えてみること。いわゆる“大所高所”から見る力を養うことも大切でしょう。

 例えばニュースで「○○会社が危ない」といったことが話題になっていれば「自分だったらどのようにリストラをするか」と考えてみてはいかがでしょうか。そして実際に発表された再建策と自分の考えに「違い」があればそこに注目し、何がどのように違うのかを考えることも大切。こうしたモノの見方・考え方の訓練をしていくと、少しずつビジネスセンスが養われていくと思います。

プロフィール:中澤一雄(なかざわ・かずお)

1950年奈良県生まれ。同志社大学工学部卒業後、日本マクドナルドに入社。1999年、ディズニーストア・ジャパンにストア・オペレーションのディレクターとして入社。87店舗のストア・オペレーション、店舗開発などに携わり、3年間で事業規模を2倍にした。2002年、日本ケンタッキー・フライド・チキンに入社。取締役執行役員常務として1150店舗を運営、1000人のマネジメントの総責任者を務めた。2008年4月、ウォルト・ディズニー・ジャパンに入社。同年10月、ディズニー・コンシューマ・プロダクツの日本代表に就任。現在に至る。


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