ネオナチを許してはいけない……極右政党NPDの台頭松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年02月16日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

 こういった考え方は、ひとえに歴史の教訓から生まれたものだ。第一次世界大戦後、ドイツが作ったワイマール憲法は人権保障をうたい世界で最も先進的な憲法とされたが、折からの世界恐慌や、小党乱立を防げない選挙制度を利用され、ナチス・ドイツの台頭を許してしまった。人間の尊厳を踏みにじるような動きを看過してはならず、積極的に摘み取らなければならないということを、ドイツは歴史から学んでいる。

 こうした考え方からするとNPDの活動や存在自体が違法に思えるのだが、NPDは公にナチズムを正当化するようなことはせずギリギリの線で主張を展開しているため、党としての活動禁止には至っていない。

不満を吸い上げる

 そういえば先日、日本から来た方からこんな質問を受けた。「東西ドイツ統一を題材にした日本の漫画を読んだところ、統一後のドイツは夢が破れ、ネオナチの活動が激しいとありました。ドイツはそんなに危なくなっているのですか?」と。漫画にしろ小説にしろ、あるいはドラマにしろ、フィクションを基に外国の実情を判断されても困るのだが、結論から書くとネオナチの活動があるのは事実でも極端な状況にあるわけではない。

 ネオナチの事件はよく旧東ドイツ地域で起きるのだが、これはドイツ再統一から20年経った今なお人口流出が止まらず20%もの高い失業率に悩み、真の復興を果たすことができない同地域の人々の不満を吸い上げる形でネオナチが力を付けているからだ。「ドイツ人のためのドイツを!」「ドイツ人に仕事を!」といったキャッチフレーズは必ず一定の共感を呼ぶが、ネオナチはそういった心理を利用し、社会背景の議論を省略して外国人排斥や民族主義に結び付けてゆく。ただし、旧東ドイツ地域では共産党も市民の不満を吸い上げ勢力を延ばしているから、単に右派だけが伸張しているわけではない。

反NPDの垂れ幕「目を背けるな!右翼のテロをストップ!」

 日本から来た方から「それでは、旧東ドイツ地域は旅行しない方がいいのでしょうか?」とも聞かれたが、右翼の集会に出かけるとか、わざわざ問題行動を起こすとかしなければ、普通の旅行に特段の危険があるわけではない。

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