土肥 ちきりんさんは、phaさんのプログラムのどんなところが“面白い”と感じているのですか?
ちきりん 「権威のあるモノがパターン化している」ということが、phaさんのプログラムを見ているとよく分かるんです。例えば新聞の文章というのは、どれもこれもすべて正しいことのように見えます。けど「圧縮新聞」を読んで分かるのは、脈絡もなくグチャグチャにされているのに新聞っぽい文章になっているということ。
なぜかというと、そもそも新聞の文章というのはその内容に権威があるのではなく、特定のプロトコルに基づいて書かれているために権威があるように見えるだけだから。なので記事に全く関係のない言葉に置き換えても、新聞っぽく読めるんですよ。
ということは新聞社の人たちが「権威のあるモノ」と思っていたのは、実はパターン化されていたということ。そのことをphaさんのプログラムが表現してくれた。「村上春樹風に語るスレジェネレーター」も全く同じですよね。エライ評論家は「村上春樹さんが書いた文章はすばらしい」と、まるで神様が書いたかのように評価しているでしょ。そのことは否定しませんが、村上春樹さんの文章もブログラムを使えば、どんな言葉を入れても成立してしまう。とてもくだらない言葉を入れても、ちゃんとそれ風になって読めてしまう。それがとても面白い。
phaさんはどのようにして、このようなアイデアを思いついたんですか?
pha たぶん僕は混沌とした状態が好きなんですよね。ノイズミュージックや現代詩やシュールレアリスムのような。スパムサイトに使われているワードサラダという技術のように、自動的に無意味な文章を生成させるプログラムはよくあります。でもそれは「圧縮新聞」のようにコンセプトがなくて、適当に生成するだけ。それもものすごく混沌としているのですが、おそらく普通の人は読んでいても面白くない。
僕は混沌を見ているだけでも結構楽しいのですが、たぶん多くの人にとってはそうではない。そこで「混沌に砂糖をふりかけて、なんとか食べやすくする方法はないかなあ」と考えていました。そこでみんなに馴染みのあるフォーマットとして「新聞で試してみよう」と思ったんです。新聞って、もっともらしいこと書いてあるじゃないですか。そのフォーマットを使ったままで、内容を意味不明のものにすれば面白いと思い、始めました。元ネタとしてはかつてインターネットで「MADニュース」というものが流行したのですが、それはラジオのニュースの音声をコラージュしてシュールに仕上げたもの。それと同じようなことを自動生成で、できるんじゃないかと思ったんですね。
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